今年前半、国際線のファーストクラスがあまりよろしくない形で世間を賑わした。公私混同した公金の使用で退任に追い込まれた舛添要一・前東京都知事により、ファーストクラスのイメージに傷がついてしまった感は否めない。
欧州線の運賃は往復で200万円以上。エコノミークラス最安の割引運賃と比べると約10倍、ビジネスクラスの普通運賃と比べても2倍以上だ。自称“トップリーダー”があれだけ批判を受けたのは、費用に見合った成果を出していないと、多くの人に映ったからだろう。
豪華さや優雅さが漂うファーストクラス。広い機内だけではなく、機内食やラウンジサービスなども行き届いている。どこか手の届かない旅というイメージを抱く人が多いのではないだろうか。
—記事の概要—
・往復とも特典航空券
・13機の777-300ER
・昨年より4万マイル多く必要に
・ファーストクラスのために1泊追加
*第2回ラウンジ編はこちら。
*第3回ロンドン行き機内編はこちら。
*第4回羽田行き機内とヒースロー空港ラウンジ編はこちら。
往復とも特典航空券
私は昨年、パリ航空ショーを取材する際、日本航空(JAL/JL、9201)の羽田発パリ行きJL45便のファーストクラスに乗り、その様子をリポートした。当然公金でも普通運賃でもない。マイルを特典航空券に交換して乗ったものだ(関連記事)。
世界最大級の航空ショーであるパリは奇数年開催。今年は偶数年にロンドン近郊で開かれるファンボロー航空ショーの年で、私は再び特典航空券を使い、JALのファーストクラスに乗ってみた。
昨年は往路のパリ行きしかファーストが取れず、復路は特典航空券の競争率が低そうな成田行きのエコノミーを選んだ。ファーストを往路にしたのは、羽田空港のラウンジサービスをはじめ、自国の空港の方がサービスを堪能でき、問題点も把握出来ると考えたからだ。
今回の羽田-ロンドン線の搭乗リポートは、単にまたファーストクラスに乗っただけでは面白くない。多少は変化をつけようと、往復ともファーストに乗り、海外発便の様子もお伝えしたい。そして、前回は羽田のラウンジで食べ過ぎてしまい、機内食をかなり苦しい思いで食べたので、羽田での過ごし方にも気を遣った。
今回の旅については、すでに私が日経ビジネスオンラインで連載している「天空万華鏡」で、8月5日に「特典航空券でファーストクラスに乗ってきた 幻のシャンパンを機内で飲み比べ!」という記事で紹介した。しかし、こちらはビジネスマン向けなので、あまり詳しいことには言及しなかった。
本特集では、サービスの詳細や気になった点など、より踏み込んだ形でファーストクラスの世界を紹介していきたい。
13機の777-300ER
まずは、JALが現在提供している国際線ファーストクラスのサービスを見てみよう。
現在運航しているファーストクラス付きの機材は、ボーイング777-300ER型機「スカイスイート777」のみ。13機保有しており、欧米の長距離路線を中心に投入されている。
8月31日までは8路線で運航。羽田-ロンドン線(JL43/44便)のほか、羽田-パリ(JL45/46)、羽田-サンフランシスコ(JL2/1)、成田-ニューヨーク(JL6/5)、成田-シカゴ(JL10/9)、成田-ロサンゼルス(JL62/61)、成田-ジャカルタ(JL725/726)、成田-シドニー(JL771/772)となっている。
座席数は244席で、ファースト8席、ビジネス49席、プレミアムエコノミー40席、エコノミー147席。改修初号機(登録番号JA731J)による初便は、2013年1月9日の成田発ロンドン行きJL401便だった。2010年1月19日に経営破綻後、初めて投入した新仕様機で、JALが背水の陣で挑んだ機体だ。
ファーストのシート名は「JALスイート」。配列は1席-2席-1席の1列あたり4席で、ベッド長は約199.4cm、ベッド幅は最大約84cm。世界最大級のベッドサイズで、個人モニター23インチだ。ビジネスと比べると、ベッド幅は20cmも違い、長さも10cmほど違う。今回のリポートでは、こうした点についても違いに触れたい。
機内での楽しみと言えば機内食。スカイスイート777のデビューと同時にリニューアルしたもので、“空の上のレストラン”をコンセプトとし、宿泊設備を備えたレストラン「オーベルジュ」を目指した。
機内インターネット接続サービス「JALスカイWiFi」にも対応しており、中国上空などを除いてインターネットを利用できる。
ファーストクラスを利用する上で不可欠なのは、空港のラウンジだ。羽田空港では2014年8月29日にリニューアルオープンした、ファーストクラスラウンジに立ち寄った。シェフが鉄板で料理したり、マッサージや靴磨きなど、人を介するサービスを重視することで差別化を図っている。
一方、ロンドンからの帰国便では、JALのラウンジがないことから提携先のブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)の「Galleries First Lounge(ギャラリーズ ファーストラウンジ)」を利用することになる。
昨年より4万マイル多く必要に
では、羽田-ロンドン往復の場合、ファーストクラスの特典航空券に交換するためには、どの位マイルを使うのだろうか。日本と欧州間のファーストクラスは、往復16万マイルで交換できる。ビジネスからのアップグレードと比べて、約2倍のマイルが必要だ。
2015年10月までは往復12万マイルだったので、前回よりも4万マイル多く必要になってしまった。実費としての負担は往復で3万円程度に留められたが、かなりの負担増になった。そうは言っても、まだ手元には10万マイル以上あるので、特典航空券へ交換する“金銭感覚”がおかしくなっているようだ。
ちなみにビジネスは往復11万マイル、プレミアムエコノミーは同7万マイル、エコノミーは同5万5000マイル。ファーストを含むどのクラスも、半分のマイルで片道利用も出来る。
そして、特典航空券を予約する際に気をつける点がある。必ず片道ずつ予約することだ。往復で予約した際、片道のみ席を確保できても無効になってしまう。後から片道の旅程には切り替えられないのだ。
前回と同様、今回貯めたマイルも、光熱費など毎月の公共料金引き落としと取材時の交通費の立て替えなど、クレジットカード利用による「陸(おか)マイル」で貯まったものが大半。航空会社のマイレージサービスのステータスは搭乗実績がないと獲得できないが、マイルは私のように国内線利用が大半の人でも、クレジットカードの利用で積み上げることができる。
ファーストクラスのために1泊追加
今回のファンボロー航空ショー取材は、当初は7月9日土曜に羽田を出発してロンドンに同日着、10日から15日まで取材し、一週間後の16日土曜にロンドンを出る予定だった。
取材予定が固まったのは5月に入ってから。最初にJALのウェブサイトにある通常の予約画面でファーストに空席がある日を調べてから、往路と復路を分けて予約した。このため、復路は比較的早く席を確保できたが、9日の羽田発がなかなか取れない。なぜなら、9日はもともと満席で、ダメ元で予約したからだ。
結局9日出発は諦め、空席があった8日を選んだ。ホテル代が高いロンドンなので、無駄な宿泊はしたくないが、ファーストに乗れるか否かが掛かっているので、仕方がない。比較的安価なホリデイイン エクスプレスでさえ、1泊2万円は掛かってしまう。
こうして、7月8日金曜に羽田を出発し、16日土曜にロンドンを出発する便で帰国する旅程が決まった。
次回は羽田のファーストクラスラウンジ編。昨年はここでカレーなどを食べ過ぎてしまったが、たまたま深夜に羽田での取材が入ったことで、ラウンジでの食べ過ぎを確実に回避できるスケジュールになったのだった。
(ラウンジ編につづく)
関連リンク
スカイスイート 777(日本航空)
特集・JALファーストクラスで行くロンドン(全4回)
(2)専用ラウンジは腹八分目(16年8月17日)
(3)雲上の1A席で楽しむ“幻のシャンパン”(16年9月12日)
(4)幻のシャンパン「サロン」を飲み比べてみた(16年10月23日)
スカイスイート 777
写真特集・JALスカイスイート777ができるまで
第1回 シート外した機内は広大な空間(14年7月28日)
第2回 新シート244席を手作業で(14年7月30日)
最終回 格納庫離れる最終改修機(14年8月3日)
特集・JAL国際線ファーストで行くパリ(2015年の搭乗記)
(1)特典航空券でファーストクラスに乗ってみた(15年7月24日)
(2)専用ラウンジは食べ過ぎ注意(15年7月25日)
(3)12時間半乗っても疲れない(15年7月27日)