官公庁, 空港 — 2016年7月29日 17:40 JST

羽田空港、都心上空通り離発着へ 新ルート了承

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 羽田空港の発着枠拡大を検討している国土交通省航空局(JCAB)は7月28日、首都圏空港の機能強化について、関係自治体や航空会社など関係者間で協議した。JCABは自治体からの要望や住民の意見を踏まえ機能強化を図るとし、進入開始高度の引き上げや一定条件下での運用時間後ろ倒し、海上ルートの活用など、運用を工夫することで、都心上空での騒音軽減などを狙う。今回の協議により、都心上空の通過は事実上認められた。

進入開始高度の引き上げで騒音軽減を狙う羽田空港=15年3月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新ルートは、年間の約4割を占める南風時での進入で新宿区や渋谷区、港区、品川区などの都心部上空を通過。到着経路の進入を開始する高度を引き上げる。例えばさいたま市上空は3000フィート(914.4メートル)から5000フィートに、葛飾区上空は6000フィート、渋谷区や新宿区上空は3000フィートとする。高度引き上げにより陸域全体への騒音影響を抑え、周辺の飛行場に離着陸する航空機との安全間隔を確保する。

 騒音影響が特に大きい南風時のB滑走路は、出発便数を当初案の24機から20機に調整。C滑走路からの出発機を増加させることで、1時間あたり90機の発着機数を維持する。

 年間の約6割を占める北風時は、C滑走路からの出発経路を従来の浦安市沖から市川市上空を通過するルートから、江東区や江戸川区、墨田区などの荒川沿いを飛行するルートに変更。午前6時から午前10時30分までの運用時間をそれぞれ1時間後ろ倒しにすることで、騒音に配慮する。

 落下物への対策については、航空会社に対し点検・整備の徹底を指導。また、駐機中の航空機については、国が航空機をチェックする新たな仕組みを構築する。

 機能強化方策の進捗状況については、関係自治体への情報提供を継続。また、新たに騒音測定局を設置することなどで、新しい飛行経路の騒音影響への監視を強化する。

 羽田の発着枠は年間44.7万回で、このうち国際線は9万回(昼間6万回、深夜早朝3万回)。2020年の東京五輪開催までに、羽田は滑走路処理能力や運用、飛行経路の見直しで約1.3万回から3.9万回の上乗せを図る。

 JCABでは3.9万回を上乗せした場合の効果について、国際線の旅客数は2015年の1259万人から705万人増の1964万人となり、うち訪日客数は497万人から294万人増の791万人となると試算している。また、経済波及効果は6503億円、税収の増加は532億円、雇用増加は4万7295人を見込んでいる。

南風時の滑走路運用・飛行経路の当初見直し案(国交省の資料から)

北風時の滑走路運用・飛行経路の当初見直し案(国交省の資料から)

南風時の進入開始高度引き上げ(国交省の資料から)

各滑走路の使用便数(国交省の資料から)

北風時の富津沖海上ルート(国交省の資料から)

関連リンク
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