2016年3月期通期決算で3期連続黒字を達成し、累積損失を解消したピーチ・アビエーション(APJ/MM)。本特集の前編 [1]では、井上慎一CEO(最高経営責任者)と岡村淳也財務・法務統括本部長に、黒字達成や累損解消の理由をはじめ、これまでの取り組みを聞いた。
ピーチは現在、17機のエアバスA320型機(180席)で、国内線14路線、国際線10路線を運航している。機体メーカーの動きを見ると、エアバスはA320の燃費を向上させた発展型であるA320neoを登場させた。ボーイングも、737型機の最新型となる737 MAXの開発を進めている。
路線網の観点では、ピーチは2017年度を目途に仙台空港を拠点化する。国の動きでは2017年3月26日に始まる夏ダイヤから、新千歳空港の発着枠を拡大。現状の1時間当たり最大32回を42回に増やす。
4社ある国内LCCのうち、最初に黒字化したピーチ。本特集の後編となる今回は、井上CEOと遠藤哲総合企画部長に、今後どのような機材や路線計画を考えているのかを聞いた。黒字化後のピーチは、何を目指すのか。

ピーチの井上CEO=16年6月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—後編の概要—
・LCCのビジネスモデル忠実に
・訪日客獲得に注力
・機材稼働率にこだわる
—前編 [1]の概要—
・コスト削減より筋肉質
・関西モデルで仙台目指す
・Instagramでリサーチ
・品質とコストのバランス
LCCのビジネスモデル忠実に
── 使用機材は従来型のA320のみ。燃費を改善する翼端のシャークレットを付けた機体もない。今後の機材計画は。

ピーチのA320。シャークレットを取り付けた機体もなく単一機材を徹底している=13年12月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
井上CEO:基本的には単一機材で行く。欧州で成功しているLCCは、基本は単一機材だ。彼らはいまだに成長している。LCCのビジネスモデルを忠実にやっている。
一方で東南アジアのLCCは、安値競争に陥っており、あまり良い状況ではない。この差は何だろうと考えると、ともに単一機材だが、LCCのビジネスモデルを忠実にやっているのは欧州ではないだろうか。機材稼働をいかに高め、どれだけ余計なことをしないかということだ。
ライアンエア(RYR/FR)もよく調べると、それほど評判が高いわけではない。しかし、利益は前年対比で43%くらい上げている。これはなぜなんだろうと。
顧客の期待値をある程度コントロールしているのでは、というのが僕の仮説。あまり良いサービスをしてしまうと、期待値が上がってしまう。サービスを向上させても、乗客から見れば「まだまだ足りない」となってしまいかねない。
サービスはこの程度だが、安いしちゃんと飛んでいると、あえて乗客にそう思わせているのではないか。
東南アジアはわかりやすく言えば、(ビジネスモデルを)コピーしているだけ。そのままずっと来てしまっている。
── 今後は従来型のA320を発注できなくなっていく。A320neoを導入する可能性は。
遠藤氏:A320neoは選択肢に含めて考えていく。しかし、現在は初期の不具合がプラット・アンド・ホイットニー製エンジン(PW1100G-JM)関係で発生しており、冷静に見極めなければならない。
現在は2017年度まで決めているので、2018年度以降は両方の選択肢を含めて考えていきたい。
── 737という選択肢は。
遠藤氏:そういったことも含めて検討していく。世界中でもトランジション(機種移行)は少ないが例はある。あらゆる可能性を考えている。
似通ったロングセラーの飛行機だが、次世代機がものすごいアドバンテージを持っていれば検討する。最初から選択肢をなくしてしまうと、成長の機会を逃すことにもつながりかねない。
訪日客獲得に注力
── 路線計画については、2017年度に仙台空港を拠点化する。他社では台北から以遠権を使う計画も出てきている。

羽田からは台北とソウルへ飛ぶ。訪日需要はまだまだ取り込めるとピーチは考えている=16年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
井上CEO:基本的には日本と海外との間の流動に、我々はフォーカスしている。まだまだニーズがあると思う。台湾から以遠権を使った東南アジア路線も