日本航空(JAL/JL、9201)初のヘリンボーン配列のビジネスクラスを導入した、国際線用ボーイング777-200ER型機の新仕様機「スカイスイート777」が6月18日、羽田-バンコク線(JL031/034便)に就航した。8月から羽田-シンガポール線、年明け2017年初から羽田-ホノルル線と関西-ホノルル線、同年春からは成田-ホノルル線、中部-ホノルル線にも投入を予定している。
JALは777-200ERを11機保有。東南アジアやハワイなど国際線中距離路線に投入している。18日就航した改修初号機(登録番号JA701J)に続き、2017年度内に全機の改修を終える。JALが国際線で運航するワイドボディー機では、777-200ERが新仕様への最後の改修となった。
座席数は3クラス236席。ビジネスクラスの新シート「スカイスイートIII」が42席(1-2-1席配列)、プレミアムエコノミー「スカイプレミアム」が40席(2-4-2席配列)、エコノミー「スカイワイダー」が154席(3-4-2席配列)で、従来の3クラス仕様機の245席と比べると総座席数は9席少なく、ビジネスを14席減らし、エコノミーを5席増やした。
3クラスのうち、ビジネスクラスはフルフラットシートを斜めに配置するヘリンボーン配列をJALでは初採用し、全席から通路へアクセスできる。エコノミークラスは、夫婦や恋人同士、家族連れなど、さまざまな乗客のニーズに合わせ、各席から通路へ出入りしやすい配列を取り入れた。
ヘリンボーン配列や3-4-2席配列を導入した狙いを、商品・サービス企画本部開発部空港サービス・客室仕様グループの西垣淳太アシスタントマネジャーに聞いた。
シート先端部を立体交差
ビジネスクラスのシート「スカイスイートIII」の中央2席は、ベッドポジションにした際に進行方向左側席はシートが下へ、右側席は上に移動する構造を採り入れたことで、足もとスペースの先端部が上下に立体交差している。
「海外の他社が採用するヘリンボーン配列のシートは、ベッド時の足もとが狭いと感じました。社内ではここを解決できない限り、ヘリンボーンを導入するのはやめよう、となっていました。これを上下に交差させることで、解決できると判断しました」と、西垣さんは話す。
中央2席は約30度の角度で交差している。斜めにシートを配置することで、効率的にシートを配置できたという。
シートメーカーは、ゾディアック・シート・UK(旧コンター)。先端部を上下に交差させたシートは、JALの要望を聞いた同社からの提案で、ローンチカスタマーとして共同開発を進めた。
もっとも苦労した点を尋ねると、西垣さんは「開発担当のエンジニアとは目線が違うと思いますが、可動式アームレストが難しかったです」と振り返る。
ベッドポジションにした際、シートの高さが両端と中央左、中央右の3種類あるので、アームレストも3種類分の調整が必要になった。「スライドする長さが長ければ長いほど、途中で止まってしまうこともあり、最後まで手直しが続きました」と、シートごとの調整に苦労した。
また、小物入れの内部にヘッドホン掛けを設けたり、ペットボトルを収納できるサイズにした。サイドテーブルも大きめにすることで、ノートパソコンを置いて食事出来るようにした
スカイスイートIIIの開発期間は約2年。納品1カ月前まで開発が続いたという。シートの安全性を審査するFAA(米国連邦航空局)も、新シートの場合は一から調べることになるため、JALとしてもメーカーと共に乗り越えなければならないことが多くあったという。
エコノミーもがんばらないと
プレミアムエコノミーとエコノミーは、2013年1月に就航した国際線長距離路線用機材、ボーイング777-300ER型機の新仕様機で採用したものを踏襲した。しかし、エコノミーはシート配列など、細かなところを見直した。
「家族連れや友人同士など、さまざまな方に乗っていただくので、エコノミーもがんばらないと、ということで見直しました」と西垣さんは話す。
エコノミークラスのシート「スカイワイダー」は、横9席の左から3-4-2配列。夫婦や恋人同士、家族連れなど、さまざまな乗客のニーズに合わせ、各席から通路へ出入りしやすい配列を取り入れた。
シートピッチは33から34インチ(約83.8から86.4センチ)、アームレスト間のシート幅は18.5インチ(47センチ)で、シートメーカーは独ZIM。777-300ER用として開発された際は、iPhone 4のサイズを想定して個人モニター横にスマートフォンを入れるスペースを作った。しかしその後、iPhoneは大型化して入らなくなってしまった。
「ものすごく細かいですが、シートポケット前に設けたメッシュのポケットを改良しました。モニター横にスマートフォンが入らなくなってしまったので、小物を分けて入れられるようにしました」と説明する西垣さん。
「こっちは時計、こっちはパスポートというように、ポケット内でゴチャゴチャにならないようにしました」と話す。自身が出張などで利用した際に感じた点を、改良に生かした。
中距離路線を飛ぶ777-200ERの新仕様機スカイスイート777の投入路線は、6月18日就航の羽田-バンコク線を皮切りに、8月から羽田-シンガポール線、年明け2017年初から羽田-ホノルル線と関西-ホノルル線、同年春からは成田-ホノルル線、中部-ホノルル線にも投入を予定している。
ビジネスクラスの開発に苦労した西垣さんは、「途中で出来ないのではと思うほど、リスクを抱えていたので、ここまできてホッとしています」と、胸をなで下ろした。
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