全日本空輸(ANA/NH)は1月13日、空港のカウンターでチェックイン業務などを行う地上旅客係員(グランドスタッフ)の接客技術を評価する「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」を、東京・大田区の同社訓練施設「SPECIA(スペーシア)」で開催した。
8回目となる今年は、羽田空港から出場した長田恵未(おさだ・めぐみ)さんがグランプリを受賞した。羽田の出場者がグランプリを受賞するのは、5回目以来首位を奪還した2014年12月実施の前回に続く2連覇で、応援団からも歓声が上がった。
知識や提案力に焦点
コンテストは国内と海外の52空港の約4000人から予選出場者を各空港で選出。9月に開かれた予選参加者105人の中から、国内線18人と国際線8人の計26人が本選に出場した。身だしなみや笑顔、コミュニケーション力などの「印象」と、乗客の質問に対して正確に確信を持って答えられるか、プラスアルファの提案が出来るかの「知識」の2分野について採点が行われた。
従来のコンテストでは、航空券の手続きや手荷物預かりなどが審査の中心だったが、ウェブサイトでのチェックインなど乗客自ら手続きする機会が増えたことから、今回はよりグランドスタッフの知識や提案力、おもてなしを問う審査内容となった。
印象審査は、社内審査員の役員2人と羽田エクセルホテル東急の料飲支配人、印象評論家の計4人が行った。知識の審査は、ANAの空港業務推進部員が採点。乗客役は社員が演じた。
ANAの篠辺修社長は審査に先立ち、「国際線のシステムが昨年から今年にかけて入れ替わったり、羽田に(手荷物を乗客自身が預ける)セルフバゲージドロップが導入されるなど環境が変化してきました」と述べた上で、「出場する皆さんには、職場に戻れば若い人や新人の模範になることを期待していますが、緊張せずいつも通りに応対して欲しいです」と出場者を励ました。
コンテストが始まり、出場者がカウンターに入ると、各空港の応援団が横断幕などを手に声援を送った。今回は1人の出場者につき、日本人客2人と外国人客1人の3パターンのシナリオを用意した。
乗客役の社員が、航空券の搭乗便変更やマイレージの質問などを次々と繰り出すと、出場者たちは笑顔を絶やさず応対しつつも、自社のサービスをさりげなくピーアールしていた。また、外国人客とあいさつを交わした際、出場者が「I am nervous.(緊張しています)」と思わず本音を漏らすと、会場は笑いに包まれた。
ベイビーと二人三脚
グランプリを受賞した長田さんは入社5年目で、国内線部門に出場。妊娠中の出場となったが、常に笑顔で自信を持って乗客役の質問に答えていた。
授賞式で篠辺社長からトロフィーを贈られた長田さんは、「このような賞をいただけるとは思ってもみませんでしたが、お腹のベイビーと力を合わせた結果だと思います。今日まで練習を重ねてきましたが、先輩や同僚とこの日を迎えられてうれしいです」と喜びを表わした。
長田さんは普段、乗客の話をよく聞き、寄り添う対応を心掛けているという。コンテスト終了後、「体調は100%でしたが、出来具合は7-8割。もっと案内したかったこともありました」と笑顔で話しながらも、課題に感じた点を気に掛けていた。
グランプリのほか、準グランプリには新千歳空港の王茜(オウ・セン)さん(入社2年目)と那覇空港の入戸野利香さん(同1年目)、審査員特別賞に羽田空港の加藤友紀奈さん(同3年目)が選ばれた。
また、保安検査場で応対する警備会社3社から各社2人1組も保安部門に出場。成田空港を担当している一般財団法人・空港保安事業センターの大里幸樹さんと野田紗由莉さんのチームが、エクセレント セキュリティ賞を受賞した。
今回は新たに、搭乗口(ゲート)での業務をビデオ撮影し、事前に審査を実施。空港の種別を、国内線は大型機で国際線は3クラス設定の「カテゴリーA」、国内線が中型機や小型機で国際線は2クラス設定の「カテゴリーB」、国内線のみで小型機の「カテゴリーC」の3つに分けた。評価ポイントとして、印象や安全性、アナウンス、混雑整理、あいさつ、空港独自の取り組みを審査した。
カテゴリーAは松山空港、カテゴリーBは福島空港、カテゴリーCは佐賀空港が、優秀賞に選ばれた。
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全日本空輸
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