エアライン, 解説・コラム — 2015年12月6日 23:40 JST

「同じフライト一度しかない」ANAの接客No.1 CA、求める後輩は?

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 年に一度、全日本空輸(ANA/NH)の客室乗務員(CA)が接客スキルを競い合う「第3回 OMOTENASHIの達人コンテスト」が12月2日、東京・大田区にあるANA訓練センターで開かれた。

 コンテストは3人1組で出場するチーム部門と個人部門が開かれ、チーム部門は30チームによる予選を勝ち抜いた2チームが、個人部門は約7100人の客室乗務員の中から投票で選ばれた上位8人が出場した。

 国際線拡大を急ぐANAは、今後1000人規模の新人客室乗務員を受け入れていく。こうした中、グランプリに選ばれた出場者5人は、今後ANAの客室乗務員にとって模範となる存在だ。彼女たちは、どのような後輩を望んでいるのだろうか。

チーム部門出場者紹介で意気込みを表現する(左から)谷村さん、辻尾さん、佐藤さん=12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

クルーにも思いやりある人

コンテストに挑む「にこにこ Caring」チームの辻尾さん=12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 チーム部門でグランプリを獲得した「にこにこ Caring」は、乗務第2課所属の谷村綾香さん(07年度入社)と辻尾祐香さん(07年度入社)、佐藤由貴乃さん(10年度入社)が組んだチーム。普段から乗務を共にする3人は、客室側の応対を谷村さんと辻尾さんが、ギャレー(厨房設備)での機内食の盛り付けなどを佐藤さんが主に担当した。

 審査の場となった訓練センターの客室モックアップは、国際線ビジネスクラスを再現したもの。2本ある通路のうち、谷村さんらのチームは進行方向右側を、もう一つの本選出場チームが左側を担当。篠辺修社長らANAの役員が中心となった乗客役に約1時間半、羽田-ロンドン線(NH211便)を想定してコースメニューやドリンクを提供した。

 接戦の結果、もう一組の本選進出チームであるロンドンベースの「The Smoothies」を下した。

ギャレーで機内食を用意する谷村さん=12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 サービスを審査されるという、普段とは大きく異なる状況下。ギャレーに戻って役割分担を確認し合う3人の姿は、どこか安堵感が漂っていた。

 表彰式後、どんな後輩を迎えたいのだろうか。先輩に助けられたと振り返る佐藤さんは、「ANAが好きで入ってくれる人。世界に向け、日本のお客様だけではなく外国の方にも楽しんでもらえるサービスを、一緒にしてくれる人」と、外国人にもくつろいでもらえるホスピタリティーを求めていた。

 辻尾さんは「フライト自体が好きであることが大事。いろいろなフライトがある中、同じフライトは一度しかない。熱いフライトが出来る人」と、1便ごとのフライトに情熱を注げる人を待っている。

 「胸がいっぱいで何を言ってよいかわからないが、いつも飛んでいるメンバーと、いつものようにサービスができてうれしい」と、表彰式で3人を代表してあいさつし、喜びと周囲への感謝の気持ちを述べたのは谷村さん。「熱いフライト」という辻尾さんの言葉を受けながら、「ANAが好き、フライトが好き、人が好きで、お客様だけではなく、クルーにも思いやりのある、すがすがしい人」を待っているという。

なぜCAになりたかったのか。初心を忘れずに

多頻度で利用する乗客と話す山田さん=12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 個人部門は入社4年未満の「フレッシャーズ層(ジュニア)」と、入社5年目以上の「エキスパーティーズ層(シニア)」に分かれて審査が行われた。4人ずつ出場した中から、フレッシャーズは乗務第1課の山田亜沙美さん(13年度入社)が、エキスパーティーズは乗務第7課の小松原由衣さん(05年度入社)が栄冠を手にした。

 フレッシャーズ層グランプリの山田さんは、国内線プレミアムクラスでのサービススキルが審査された。マスク姿の女性客には、かぜ薬が必要かを尋ねたり、機内が乾燥していることから乗客の喉を気遣ってアメを手渡すなど、4人の乗客役一人ひとりの様子を見て、応対していった。

 3年目に入った客室乗務員として、山田さんは「どんなお客様にも、一歩踏み込んでいける人。体力的に大変だけど、どんなフライトも楽しんで乗り越えていける人」と、望む後輩像を話してくれた。

 華やかなイメージとは裏腹に、体力を求められる客室乗務員。自らの意思で積極的に相手の側に立ったサービスを考えて行く上で、体力と気持ちの強さも必要条件に挙げた。

「なぜCAになりたかったのか。初心を忘れずに」と後輩に望む小松原さん=12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 エキスパーティーズ層で最優秀となった小松原さんは、自分らしさを出すことと、自身の持ち味ある「いかなる時も笑顔」を、本選で発揮できたことがグランプリ獲得につながったという。

 幼いころ、成田に祖父母の家があった小松原さんは、飛行機と接する中で客室乗務員を目指すようになった。

 「なぜ客室乗務員になりたかったのか、初心を忘れずに成長し、自分を高めていけるキラキラした後輩に入ってきて欲しい」と、この仕事を目指した気持ちをいつまでも心に持ち続けて欲しいという。

 7100人の客室乗務員の頂点に立った5人。彼女たちに憧れた後輩は、今後どのような活躍をみせてくれるだろうか。

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