エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2015年11月29日 19:10 JST

「普段顔が見えないから丁寧にもてなしたい」JAL、初の伊丹Facebookイベントは20人限定

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 企業のSNSを使った情報発信が活発化して久しい。利用者との距離を縮め、自社をより深く理解してもらうため、各社は工夫を凝らしている。

 Facebook(フェイスブック)による情報発信を、日本航空(JAL/JL、9201)が開始したのは2010年1月19日の経営破綻後の2011年4月5日。この月から鶴丸を復活させたJALは、より利用者と近い関係を築く方法のひとつとして、双方向コミュニケーションを始めた。2015年11月29日現在、126万人以上が「いいね!」をクリックしている。

 航空会社の場合、ファン向けのイベントを機体や格納庫といった普段は立ち入れない場所で開催することが特色だ。しかし、特に格納庫がある場所でのイベントとなると、どうしても羽田空港を擁する東京で開かれることが多くなってしまう。

 JALでも、これまでに羽田の格納庫でのファンイベントは開催済み。しかし、ファンからは地方での開催を望む声も多く、これに応える形で11月1日、伊丹空港でイベントを開いた。格納庫があるほか、グループのジェイエア(JAR/XM)が拠点を構えていることから、羽田以外では初のイベント開催地に選ばれた。

客室モックアップで岩下さん(右)と記念撮影するFacebookイベントの参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

すべての人をもてなしたい

 約400人の応募があったが、参加できたのは抽選で当選した10組20人。JALでFacebookページを運用する“中の人”のひとり、コーポレートブランド推進部の原芳江さんは、異動前は成田空港で空港旅客係員(グランドスタッフ)として利用者と接してきた。「普段はお互いに顔が見えないSNSだからこそ、あえて少人数開催にした。イベントでは、すべてのお客さまに丁寧なおもてなしをしたかった」と、少人数制にこだわった理由を話す。

 JALとジェイエア共催とした今回のイベントは、約半年前から準備を進めてきた。東京と大阪で離れていることから、実際に顔を合わせて打ち合わせできる時間もなかなか取れず、思うように進まないこともあったという。

 こうした制約はあったものの、パイロットによる運航前のブリーフィング内容の解説や、客室乗務員による緊急脱出訓練やサービス体験、機体見学など、航空会社の施設ならではのイベントが開かれた。

機内でのブリーフィングを再現するジェイエアの酒井機長=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 運航前のブリーフィングを再現したのは、ジェイエアCRJ運航乗員部の酒井真比古機長。酒井機長は「“酒”のさかいです。話し方でわかると思いますが大阪出身です!」と、自己紹介で参加者をリラックスさせていた。

 このブリーフィングは、機長がフライトプランなどを客室乗務員に説明するもの。イベントでは、酒井機長がベルトサインの消灯時間、飛行高度、出発時や到着時の使用滑走路、スポットなどを読み上げたが、実際に客室乗務員に伝える速さで話すと、参加者たちはメモが追いつかない様子だった。

 客室モックアップでは、ジェイエアの客室乗務員の小宮山真央さんが、緊急脱出訓練やカートを使ったドリンクサービスを説明。火災発生を想定した訓練では、実際にスモークを出し、暗くなったモックアップ内で小宮山さんが懐中電灯を振り、参加者を外に誘導した。

 ドリンクサービスは、1年間の地上勤務でFacebookチームに参加しているJALの客室乗務員、岩下百利さんと小宮山さんが、実際にカートを使ってサービスを再現。参加者の休憩も兼ねたコーナーとして設けただけではなく、参加者にもサービスを体験してもらった。

 客室乗務員の訓練紹介としては、スライドを使った機外脱出も披露。訓練着を着用した岩下さんがスライドをすべる姿勢を説明した後、実際にスライドを滑り降りた。

客室モックアップでドリンクサービスする小宮山さん(奥)と岩下さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

サプライズで新造機お出迎え

 イベントには、サプライズも用意された。ジェイエアが運航するエンブラエル170(E170)型機の16号機(登録番号JA226J)が、この日に伊丹へ到着することから、参加者に出迎えてもらう企画だ。

 ジェイエアは2009年2月からE170を導入。座席数は76席、16号機到着時点で15機(JA211J-JA225J)が就航している。16号機はエンブラエルの工場があるブラジルからカーボヴェルデ、スペイン、キプロス、アラブ首長国連邦、インド、ベトナムを経て、1日午後に伊丹へ到着した。

 格納庫では、ジェイエアの整備士、山崎正秀さんがJALグループの機材や、16号機の航路を解説。山崎さんがまもなく16号機が到着すると発表すると、参加者からは歓声があがった。JALグループの新造機は、大半が羽田空港や成田空港に到着するため、伊丹は珍しい。5日がかりでやってくる新造機の出迎えは、20人だけが体験できるサプライズ企画となった。

Facebookファンイベントの参加者らに出迎えられて格納庫へ入るジェイエアのE170の16号機を出迎える=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機体を出迎えた後は、ジェイエアが運航するもう1機種、ボンバルディアCRJ200型機の機体内外を見学。整備士の新井哲也さんがCRJ200の各部分を解説し、機内では酒井機長がコックピットを、小宮山さんと岩下さんが客室を説明した。

 酒井機長は、母親と参加した辻建伸さん(12)をコックピットに招き入れると、機器類を丁寧に説明していた。客室では小宮山さんと岩下さんが、女性参加者にスカーフを結んだりして、記念撮影していた。

 イベントは午後1時に始まったが、予定より30分長い午後5時に終了。無事に終えてホッとしたという原さんは、「本当にいいイベントだった、予想を完全に上回った、おもてなしありがとう、といったコメントをいただけた」と喜ぶ。次回の開催は未定だというが、今回の成功を次につなげたいという。

*写真は41枚。

「いいね!」ポーズでジェイエアのE170の16号機と記念撮影するJALのFacebookファンイベントの参加者ら=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ファンイベントで挨拶するJALのFacebookチームの原さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

酒井機長の説明内容をメモする参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ジェイエアの客室モックアップを説明する客室乗務員の小宮山さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

参加者にライフベストの着用方法を説明するJALの客室乗務員でFacebookチームの岩下さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

火災による脱出訓練体験で避難アナウンスする小宮山さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

火災による脱出訓練体験で懐中電灯を振って脱出を促す小宮山さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

火災による脱出訓練体験で小宮山さんに誘導されてモックアップから脱出する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

火災による脱出訓練体験でモックアップの前後のドアから脱出する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2つだけ用意された実際に膨らむライフベストを着用した参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にスライドを使った脱出をデモする岩下さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にスライドを使った脱出をデモする岩下さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

客室モックアップで記念撮影する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

カメラに気づいて客室モックアップからポーズを取る参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

客室モックアップでドリンクサービスを受ける参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

客室モックアップでドリンクサービスする小宮山さん(奥)と岩下さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

客室モックアップでドリンクサービスを体験する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ジェイエアの客室モックアップ=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者に配られたJALやジェイエアのグッズ=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ジェイエアのエンブラエル170(手前)と190の模型=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALグループが保有する機材やE170の16号機の飛行位置を説明するジェイエアの山崎さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹へ到着するジェイエアのE170の16号機=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹へ到着するジェイエアのE170の16号機=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹へ到着したジェイエアのE170の16号機からブラジル国旗を掲げるパイロット=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ジェイエアのE170の16号機を出迎えるFacebookファンイベントの参加者ら=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookファンイベントの参加者らに出迎えられて格納庫へ入るジェイエアのE170の16号機を出迎える=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookファンイベントの参加者らに出迎えられて格納庫へ入るジェイエアのE170の16号機を出迎える=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者に機体を説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者に機体を説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にCRJ200のAPUについて説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にCRJのAPUについて説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にCRJのエンジン整備について説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

Facebookイベントの参加者にCRJのエンジン整備について説明するジェイエアの新井さん=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パイロット志望の辻さん(左)にCRJ200のコックピットを解説するジェイエアの酒井機長=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CRJ200のコックピットで記念撮影するパイロット志望の辻さん(左)とジェイエアの酒井機長=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CRJ200の機内でジェイエア客室乗務員の小宮山さんと記念撮影する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CRJ200の機内でジェイエア客室乗務員の小宮山さん(右)と記念撮影する参加者=11月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
JAL Facebookページ
日本航空
ジェイエア

ジェイエアのE170、16号機が伊丹到着 Facebookファンが出迎え(15年11月2日)