エアライン — 2015年11月24日 07:00 JST

JAL、スカラシップが40周年 アジアで閣僚輩出

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 日本航空(JAL/JL、9201)と公益財団法人JAL財団は現地時間11月23日、アジア・オセアニアの大学生を日本へ毎年招待し、日本との相互理解や交流を促進する「JALスカラシッププログラム」の40周年記念式典を、インドネシアのジャカルタで開催した。

JALスカラシップ40周年記念式典で記念写真に収まる日本とインドネシア両国の大学生と大西会長、来賓の国会議員ら=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

閣僚も輩出

 JALスカラシップは1975年発足。アジア・オセアニア地域の大学生を対象としたもので、現役閣僚や有力企業の経営者を、40年間で多数輩出している。毎回ひとつのテーマを設け、基調講演とフィールドワーク、フォーラム、ホームステイの4つを柱として運営している。基調講演は、テーマに関して第一線で活躍する講師が担当する。

スカラシップ40周年記念式典であいさつするJALの大西会長=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 来日した大学生に茶道や参禅などの日本文化を体験してもらうほか、日本人学生を交えた実地調査や施設見学などのフィールドワークを行い、日本で学んだ成果を発表する場として「アジアフォーラム」を設けている。また、都内ではJALグループ有志の、地方は地域のボランティアの家庭にホームステイし、日本の生活習慣などを実際に暮らす中で知ってもらうことにより、相互理解を深めている。

 40周年の節目を迎えた今年は46回目の実施となり、都内や石川県金沢市、白山市、能登半島を舞台に、6月29日から7月21日まで開催。「見つめよう!アジアの中のニッポン スカラーが考えるアジアとニッポンの化学反応」をテーマに、オーストラリアや中国、台湾、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、インド、タイ、カンボジア、ラオスから選出された24人が参加した。

 23日にジャカルタで開かれた40周年記念式典では、スカラシップOBでインドネシアの現役閣僚である、リザル・ラムリ海洋担当調整大臣(1975年卒業生)と、アニス・バスウェダン教育・文化大臣(1993年卒業生)が、祝辞を寄せた。当初は式典に出席予定だったが、急遽公務が入ったことで、電話での列席となった。

 ラムリ氏は「インドネシアを日本のようにしたいと思った」と語り、バスウェダン氏は「奨学金をもらったことは良い経験だった。国の違いがわかるようになり、理解を深めることが出来た」と、当時を振り返った。また、1期生であるラムリ氏は「JALは小さなことから始めたが、これだけ大きくなったことに感動した」と、40年間の成果をたたえた。

駐日大使目指す学生も

 式典には、日本とインドネシアの大学生も出席。神田外語大学の川名勇磨さんと稲垣楓香さん、ジャカルタで日本語を学ぶ大学生を中心とした日本語ミュージカル劇団「劇団 en 塾」のアチャさんとノバさんが、それぞれ相手の国への思いや自身の夢を語った。

日本とインドネシア両国の大学生らの合唱に聴き入る40周年記念式典の出席者=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 インドネシアで伝統的な結婚式などに参加した川名さんは、「日本とインドネシアの架け橋になりたい」、日本人もインドネシアをもっと知る必要があると感じた稲垣さんは、多くの日本人にインドネシアを知ってもらえるようにしていきたいという。

 日本で声優になりたいというアチャさんは、「思っていた以上に厳しい劇団で、失敗を恐れて泣いた」と、日本語の歌や踊りを覚える苦労を打ち明けた。日本語上達のために入団し、熊本にホームステイしたノバさんは、阿蘇山が噴火した際にはホームステイ先の家族が心配になり、即座に電話したという。世話になった家族に対して、「礼儀を忘れないことで、私と家族の信頼は深まった」と、交流経験を話した。

 将来は大使を目指すと夢を語ったノバさんが、「20年後か30年後、日本のインドネシア大使館でお会いしましょう」と結ぶと、会場からは大きな拍手がわき起こった。

 また、日本側の来賓として、衆議院文部科学委員長の福井照衆院議員(四国比例)をはじめとする国会議員や、パナソニック マニュファクチャリング インドネシアの菅沼一郎社長らが列席した。劇団が2011年に作ったオリジナル曲「桜よ 大好きな日本へ」を両国の大学生が合唱すると、涙を流す議員の姿もあった。

卒業生の活躍「把握しきれていなかった」

 JAL財団は、1990年発足の日航財団が前身。理事長を務めるJALの大西賢会長は、JALスカラシップが閣僚などリーダーを輩出してきた要因について、「非常に早い時期から取り組んだことでブランド力があり、有望な人材に来ていただきやすいことが理由の一つだと思う」と、長年の活動によるスカラシップとしてのブランドの醸成を挙げた。

40周年記念式典の会場に並べられたJALスカラシップ発足当時の社内報=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方で、これまでは卒業生の活躍を「十分把握しきれていなかった」(大西会長)として、卒業生と改めて連絡を取り合い、「リユニオン(再結成)したい」と大西会長は述べ、日本と海外の結びつきを強めていきたいという。

 こうしたアジアの学生とは対照的に、日本の学生は以前と比べ積極的に海外へ出向かなくなっていると指摘されることがある。大西会長は、「いったん始めるとすごく積極的になり、活躍する姿を見てきているので、落胆していない」と日本の学生に対する感想を述べ、「初めの一歩をどう踏み出すかだ」と語った。

 JALスカラシップは、これまでに1538人が卒業。このうち、インドネシアからは約1割に当たる148人が参加している。

日本語ミュージカル劇団に参加するインドネシアの大学生、ノバさん(左)とアチャさん=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

「桜よ」を合唱する日本とインドネシア両国の大学生ら=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

40周年記念式典であいさつするJALスカラシップの卒業生=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

40周年記念式典で記念写真に収まるJALスカラシップの卒業生と大西会長、来賓の国会議員ら=11月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
日本航空
JAL財団

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