エアライン, 解説・コラム — 2015年8月8日 14:15 JST

ピーチとジェットスター、中国も視野 特集・1000万人後の2大LCC

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 8月5日にジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が、6日にピーチ・アビエーション(APJ/MM)が、それぞれ累計搭乗者数が1000万人を突破した。ジェットスターは2012年7月3日の就航から3年1カ月で、ピーチは2012年3月1日の初便から3年5カ月での到達だ。

 8日からは、ピーチが国内LCCでは初の羽田発着便となる台北線を開設。羽田発の初便は、台風13号の影響により10時間以上の大幅遅延という手荒い洗礼を受けたが、国内LCCは大きな節目を迎える。

8月5日に国内LCCでは最初に累計搭乗者数1000万人に達したジェットスター・ジャパン=8月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機材は両社ともエアバスA320型機(180席)。ジェットスターは運航機数が20機と、4社ある国内LCCでは最多となる。一方、ピーチは16機体制だ。

 路線数は、ジェットスターが国内19路線と国際2路線の21路線、ピーチが国内12路線と国際8路線の20路線。ピーチは28日に関西-宮崎線、9月4日には那覇-ソウル(仁川)線を新設するため、9月に入ると国内13路線、国際9路線の22路線で、ジェットスターを抜く。

ピーチも6日に1000万人に到達=8月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
単一機種徹底のピーチ
「14年が底だった」ジェットスター
成田はLCCに「厳しい空港」
台湾でブランド築いたピーチ

 ピーチとジェットスター、日本のLCC黎明期から飛び続ける2社は、1000万人後をどうするのか。

単一機種徹底のピーチ

 「これからも単一機種で行く」。ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)の考えは明快だ。20路線を超えてからも、A320のみで運航し、ジェットスター航空(JST/JQ)やエアアジアX(XAX/D7)などのような、ワイドボディー機による中長距離LCCには手を出さない。

A320購入の調印式に挑むピーチの井上CEO(中央)とエアバスのブレジエCEO(左)、リーヒーCOO(右)、ピーチの客室乗務員=6月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 井上CEOの考えは徹底している。6月に開かれたパリ航空ショーでは、国内LCCでは初となる自社購入でA320を3機発注。2016年から受領する18号機から20号機で、ピーチが購入後、リース会社の芙蓉総合リースに一旦売却してリース契約を結ぶ「セール・アンド・リースバック」で運用していく。

 この時、取材に訪れた誰もが、最新エンジンを搭載する発展型A320neoを発注するとみていた。しかし、フタを開けてみれば従来型で、燃費を向上させる翼端の「シャークレット」すら付けていない。20号機までは同じ機体を維持する。

 ピーチは9月にジェットスターと同じ21路線になるが、機材は4機少ない。機材稼働率を高めている理由の一つは、拠点とする関西空港が24時間運用であることだ。2014年7月19日には、那覇空港を関空に続く第2拠点(ハブ)として運用開始。夜間整備や駐機が那覇でもできるようになった。

 今年3月29日からは、成田空港も増強。従来の関西線に加えて福岡線と札幌線を新設した。成田も路線を順次拡大することで拠点化を目指す。一方、2017年夏までに仙台空港の拠点化を計画しており、成田の進捗次第では仙台の第3拠点として先行する可能性がある。

 今後の路線展開はどうか。ピーチは就航以来、A320の航続距離である片道4時間圏内を前提に、国内線と国際線を区別することなく路線を広げてきた。国際線は台北と高雄、香港、ソウル、釜山の5都市。台北と高雄の2都市に就航する台湾は、現地でも高い人気を誇り、羽田就航後は、さらに人気が高まりそうだ。香港線も好調で、ソウル線も現地発の需要が旺盛だという。

「14年が底だった」ジェットスター

 一方、ジェットスター・ジャパンは、黒字化が今後の課題となる。片岡会長は、「昨年2014年6月期決算が一番ボトムだったと思う」と述べ、「業績は改善しているので、具体的にいつとは言えないが、出来るだけ早急に黒字化したい」として、黒字化の時期については、明言を避けた。

成田空港に到着したジェットスター・ジャパンのA320の20号機=14年12月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今後の路線展開は、従来通りエアバスA320型機が飛べる片道4時間以内の国際線が中心になるとの方針を示した。「北アジアや東南アジアで収益が見込め、需要が高いところを検討している」と述べるに留めた。

 現在ジェットスター・ジャパンは、20機のA320を運航している。増機の可能性については、「整備体制やパイロット、スタッフの数を考えると、当面は20機でしっかりとした事業展開をしたい」と語り、黒字化までは20機体制を維持する考えを示した。

 「日本でのLCCのシェアは現在8%だが、15%や30%という試算も出ている」として、20機以上の体制構築も検討していく。

 また、成田と関空に続く第3拠点については、現時点で具体的な計画はないとした。ジェットスター・ジャパンは成田に14機、関空に6機駐機しており、路線拡大や機材増加に合わせて拠点を増やす。

 2016年にエアアジア・ジャパンが就航する中部空港(セントレア)には、ジェットスター・ジャパンも乗り入れている。片岡会長は「優良路線なので、考える余地はある」と述べた。

成田はLCCに「厳しい空港」

 今後の事業拡大で懸案となるのが、午後11時から翌朝6時まで運航出来ない、成田空港の運用時間だ。

運用時間制限が課題の成田空港=15年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 片岡会長は「午後11時で閉まってしまうのは、LCCのビジネスモデルとしては、非常に厳しい空港。調整が非常に難しいと思うが、航空会社としては(運用時間について)弾力的な運用をしていただけるとありがたい」と要望を述べた。

 ピーチも、成田の拠点化を視野に入れているものの、運用時間の制限が課題。状況によっては、前述のように第3拠点は仙台先行となる可能性もある。

 一方で、空港へのアクセスの整備なども不可欠だと片岡会長は指摘。「成田で午前0時以降に運航した場合、実際にお客様に使っていただけるかは別の話。空港へのアクセスなどの問題もある。一概に運用時間だけ延ばして、お客様がついてくるというのは難しい」と語った。

 ジェットスター・ジャパンでは、成田での機体の有効活用策として、午後11時までに成田を出発し、翌朝6時すぎに成田へ戻る国際線の運用を検討する。

台湾でブランド築いたピーチ

 ピーチが2012年3月の就航当初から拠点とする関空。ジェットスター・ジャパンも2014年6月12日に第2拠点化し、夜間整備・駐機ができるようになった。第2拠点化については、「20機を有効活用できるようになった。関空拠点化後に国際線を飛ばす計画だったが、2月に香港線を開設できたので、多様な旅客を取り込めるようになった。昨年と比べて良い方向に向かっている」と、片岡会長は手応えを語る。

台湾第2の都市、高雄を離陸するピーチの関西行き初便=14年1月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、関空はピーチの本拠地であるほか、中国最大のLCC、春秋航空(CQH/9C)も拠点化した。春秋は主に中国内陸部からの送客に力を入れていく。関空を第2拠点化したジェットスター・ジャパンにとって、中国本土への路線開設も重要な検討課題となっている。

 中国本土について、ピーチの井上CEOは「視野に入れている」とするが、現時点で明かした計画はない。一方、台湾については、すでにピーチが一定の地位を築きつつある。

 「現地記者の反応がすごい。台湾でのブランド力が上がったと実感している」(井上CEO)と、日本のクールなブランドとして、ピーチが認知されてきたと手応えをみせる。現地の高級ホテルからは、記者会見場に利用して欲しいと声がかかるなど、低価格運賃を売りにするピーチが、台湾では日本のハイブランド企業として迎えられている。

 早朝便とはいえ、ピーチは羽田からの台北線開設にこぎつけた。週6往復でのスタートだが、10月25日からの冬ダイヤからは1日1往復(週7往復)のデイリー運航に体制を整える。国内LCCの国際線展開を見ると、ピーチについては、アジアで台湾という足場を築けたと言える。

 一方で、訪日需要が旺盛な中国本土からは、フルサービス航空会社やLCCといったビジネスモデルを問わず、日本への新規就航が盛んだ。国内LCCも、台湾や香港での成功を足がかりに、日本進出が著しい中国への早期就航による需要取り込みが、今後の課題となるだろう。

関連リンク
ピーチ・アビエーション

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