国際線のファーストクラス、記者(私)のイメージは“豪華な空の旅”だ。最上級のサービスや広い機内、高い酒類が揃ったラウンジと、すべてに特別感が漂う。
私が日経ビジネスオンラインで連載している「天空万華鏡」では、7月に入り「この夏は特典航空券でファーストクラスに! めくるめくファーストクラスの世界をマイルで体験」という記事を掲載した。実際にファーストクラスに搭乗し、ラウンジの食事や機内食も極力細かく書いたため、原稿をチェックした編集部内では「この人は食べてばかりだな(笑)」となったらしい。
次にいつ乗れるかわからない、国際線のファーストクラス。あれこれ食べてみたいと思うのは、私だけではないだろう。言うまでもなく、高額な運賃を払わなければ、ファーストクラスを体感することは出来ないからだ。
—記事の概要—
・特典航空券でファースト
・パリなら往復12万マイル
・往復取れないと無効
・東京発がオススメ
売上アップに直結するビジネスクラスとは違い、航空会社がファーストクラスの取材に応じることはまずない。ならば、人生初のファーストクラスに、自腹で乗ってみようではないかと考えた。連載で載せた記事のタイトル通り、普通運賃を払ったわけではないが……。
特典航空券でファースト
今回私が乗ったファーストクラスは、日本航空(JAL/JL、9201)の羽田発パリ行きJL45便。6月に開かれたパリ航空ショーの取材に向かう際、片道利用した。機材はボーイング777-300ER型機の新仕様機「SKY SUITE 777(スカイスイート777)」だ。
この機材のファーストクラスに足を踏み入れたことがあるのは、改修初号機(登録番号JA731J)のお披露目が行われた2012年12月と、最終号機(JA741J)が完成した2014年7月の2回だけ。いずれも取材で、まさか自分が乗客として乗ることになるとは思わなかった。
JALの羽田-パリ間のファーストクラス普通運賃は、往復で約250万円。その他のクラスの普通運賃は、ビジネスが約120万円、プレミアムエコノミーが約60万円、エコノミーが約40万円。エコノミーで最安の割引運賃は10万円台前半だ。
出張では良くてもビジネスクラス、個人で旅行に出掛けるとなれば、エコノミーを選ぶ人が大半だろう。ファーストクラスとなれば、マイルによるアップグレードくらいではないか。
パリへは羽田空港から12時間30分、パリから日本へは偏西風の関係で約1時間早く着く。パリ到着後の移動を考えると、長距離国際線ではファーストはともかく、ビジネスでゆっくり休みたいところだ。
2014年7月、英国で開かれたファンボロー航空ショーに私は取材に出掛けた。弊紙にとって初の航空ショー取材だったが、当然ながらエコノミーを割引運賃で購入した。それでも航空券だけで28万円、宿代が高いロンドンの滞在費も含めると計40万円近くかかった。
今年のパリ航空ショーは、どうせならエコノミーは避けたい。ついでに出張費も安く抑えたい。ある日友人と飲んだ時に、この話題が出た。すると彼はこんなことを言い始めた。
「記憶が正しければだけど、アップグレードではなく、特典航空券でもファーストクラスは乗れるんじゃない?」
特典航空券は主にエコノミーであり、ビジネスは設定があっても競争が激しい。ましてやファーストクラスなんて設定がないのでは──。私は勝手にそう思い込んでいた。ファーストクラスはビジネスクラスの航空券を買って、運が良ければマイルでアップグレードできるものだと。友人の話は本当なのだろうか。
弊紙の読者の方なら、何を今さらと思うかもしれないが、結論から言うと、特典航空券でファーストクラスに乗ることは可能だ。パリ航空ショーへ向かう際、特典航空券を利用してファーストクラスに乗った。
パリなら往復12万マイル
では、どのくらいマイルを使えばファーストクラスに乗れるのだろうか。JALの場合、羽田-パリ間のファーストクラスに必要なマイル数は往復12万マイル。ビジネスは8万5000マイル、プレミアムエコノミーなら7万マイル、エコノミーだと5万マイルだ。
私の場合、特典航空券へ交換した5月の時点で、マイルの残高が20万を超えていた。1マイル100円で単純換算すると、なんと2000万円相当だ。現金化出来るなら今すぐ換金したい。そして記者を増やし、2012年の創刊以来初の休暇を取りたいものだ。
私の置かれた状況はさておき、この20万マイルは搭乗してたまったというよりは、月々のカードの支払いによるものだ。現在私は、公共料金の引き落としをはじめ、デジタル一眼レフカメラやレンズといった高額商品は同じクレジットカードで購入し、マイルがたまるようにしている。
クレジットカードを作ってから2年間、一度もマイルを使わなかったことや、希望小売価格218万1600円の超望遠レンズ「ニコン AF-S 800mm f5.6」といった高額商品をカードで買ったことなどが、マイル残高の押し上げに奏功した。
往復取れないと無効
20万マイルという原資は、だいたいこのような感じでたまっていた。では実際どのように特典航空券へ交換したかを説明したい。
JALでは、国際線も片道のみ特典航空券に交換できる。しかし、今回は出張費を極力抑える目的もあったので、往復とも特典航空券に交換した。注意が必要なのは、往復では往路と復路両方の航空券が取れないと、すべて無効になる点だ。
最初はファーストクラスでの往復を考えていた。しかし、往路のファーストクラス確保を最優先するため、復路は諦めた。復路はエコノミークラス、しかも羽田便より競争率の低い成田便を選んだ。これにより、往路は羽田からパリのシャルル・ド・ゴール国際空港までをファースト、復路は同空港から成田までエコノミーで、マイルを特典航空券に交換した。
私が申し込んだ時点で、往路のファーストクラスは空席待ちだったが、搭乗2週間前を切った頃に席が取れたとのメールが届いた。エコノミーも確保できていたので、計画通り特典航空券だけでパリ航空ショーへ行けることになった。
特典航空券では、燃油サーチャージなどは負担しなければならない。今回は3万1640円かかったが、片道100万円以上のファーストクラスの運賃を考えれば、この程度は仕方ないだろう。
JALのファーストクラスは、1便あたり8席のみ。特典航空券への割り当て分となれば、恐らく1席程度だろう。もし30万円くらい支払えるのであれば、片道のみファーストの特典航空券を狙うのも手だ。片道はJALのマイレージ会員限定の片道航空券でビジネスクラスを手配すると、往復とも良い席が取りやすいのではないか。申し込む時期にもよるが、往復とも特典航空券でファーストというのは、リスクが高い気がした。
東京発がオススメ
では、往路と復路どちらをファーストクラスにするのが良いか。私はどちらかしか乗れないならば、利用する航空会社の本拠地発を選ぶ方が、ファーストのサービスをフルに堪能できると思う。
大手航空会社でファーストクラス担当の資格を持つ、現役客室乗務員にも聞いてみた。「どちらか一方なら、東京発がオススメ。機内食も日本人の好みに合うし、ラウンジも自社の上級ラウンジが使える」と、同じ意見だった。
では、実際にファーストクラスに乗ると、どのようなものなのか。最初に印象に残ったのは、羽田空港国際線ターミナルのお粗末な設備と、ないに等しいファーストクラス客向けの導線だった。
ラウンジや機内サービスは航空会社が自ら改善できるが、空港のターミナルは運営会社が改善するしかない。どんな課題があったかは、次回で触れたい。(つづきはこちら)
関連リンク
スカイスイート 777(日本航空)
特集・JAL国際線ファーストで行くパリ(全3回)
(3)12時間半乗っても疲れない(15年7月27日)
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