「頭を下げて!ヘッドダウン!」。東京・羽田にある日本航空(JAL、9201)の非常救難訓練センターが、2月20日で最後の訓練を終え、1979年3月に完成以来、35年の歴史に幕を下ろした。
同センターは、JALグループの客室乗務員約6000人が年1回、非常時の救難訓練を受ける“安全の聖地”。3月からは新整備場地区に新しい訓練センターが開設されるため、移転・取り壊しが始まった。旧整備場地区は再開発が進められており、同センターに隣接する他の会社が使用していた建物も解体され、すでに更地になっている。
この建物は元々進駐軍が建てた格納庫で、その後JALが借り受けて使用。ボーイング747型機の実物大模型(モックアップ)や、広さ20メートル×20メートルのプールなどを備える、大規模な訓練施設だった。
フィットネスクラブやジムが珍しかった開所当時は、訓練に使用しない時間帯に、福利厚生の一環として社員がプールを利用できるようにしていた。しかし、ジムなどが各地にできると利用者は減少し、近年は訓練施設としてのみ使用されていた。プールの底に線が引かれているのは、当時のなごりだ。水深は主翼側が1.4メートル、機首側は排水のために1.6メートルと0.2メートル深くなっていた。
747の実物大モックアップはらせん階段が設置されたタイプで、JALによると、訓練機器の一部を除くと、ほぼ35年前から変わっていないという。記者が訪れたのは訓練最終日の翌日21日。すでに新訓練センターで使用する部品の取り外しが始まっており、場所によりかろうじて電気が来ている状態だった。訓練時にはモックアップに取り付けてあった脱出用シューターや地上のマット、スライドラフト(救命いかだ)は、すでに片付けられていた。
このモックアップは777や767の訓練にも使用されるため、747以外の機種のドアも設けられている。高さも機種に応じて変更でき、実機と遜色ない訓練環境を作り出せた。
これまでの実物大模型では、実機と同じ部品を使用している部分が多かったが、毎日繰り返して使用することを想定していないため、修理を要することも多かった。新センターに導入するものでは、訓練に適した日本製の部品が大半を占めるようになるという。
同センターにはこのほか、昨年3月まで運航していた旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-90型機をはじめ、MD-81やMD-88の客室乗務員が使用していたモックアップや、787、777、747、767、737と各機種のドア部分を中心に再現されたモックアップが並ぶ。翼上の非常口ドアを再現したものもある。
これらのほとんどは新センターでも使用され、747の実物大モックアップやMDシリーズのものが引退となる。747はすでに退役しているが、政府専用機の乗員訓練があるため、ドア部分のモックアップは新センターで引き続き使用される。
「JALの安全を支えてくれてありがとう」「死ぬほどイヤだったけど、なくなると淋しい」「これからも頑張るぞ」、そしてなぜか「あけましておめでとうございます」。モックアップに貼られた模造紙には、さまざまな寄せ書きが書かれていた。本記事では、取り壊し前の同センター内の様子を写真でまとめた。
*写真は33枚。
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