エンブラエルは現地時間4月9日、次世代リージョナルジェット機「E2」シリーズのうち、E190-E2にインテルサットの高速インターネット接続システムを工場出荷時に搭載できるようにする契約を締結したと発表した。通信速度は最大275Mbpsで、自宅と同等のストリーミングやインターネット接続が可能になるという。

エンブラエルがE190-E2に装備するインテルサットのアンテナ(同社提供)
インテルサットのシステムは、電子制御式アレイアンテナ(ESA)を採用した初のマルチオービット(複数軌道)衛星接続システムで、広域なカバレッジや高速通信、信頼性の高さが特長。同社によると、このシステムは工場出荷時に搭載するライン装着対応が年内に可能となる見通しで、機体引き渡し直後から機内インターネットを利用できるようになる。

E190-E2での機内インターネット接続サービスのイメージ(エンブラエル提供)
屋外アンテナは、高さ3インチ(約7.6センチ)未満で空気抵抗を抑え、軽量化したことで燃費の悪化を防ぐ設計。低軌道(LEO)衛星ネットワークによる低遅延と、都市部などには静止軌道(GEO)ネットワークを活用するハイブリッド方式を採用し、地球全体をカバーする。
エンブラエル民間航空機部門のマーティン・ホームズCCO(最高商務責任者)は「信頼性の高い高速接続は、航空会社の競争力を高める要素のひとつで、乗客の生産性や機内体験の向上にもつながる」と述べた。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を終えて着陸するE190-E2=22年7月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAホールディングス(ANAHD、9202)は今年2月25日に、E190-E2を最大20機発注し、2028年度から2032年度にかけて受領予定だと発表。ANAがエンブラエル機を導入するのは初めてで、E2シリーズは本邦初導入となる。内訳は確定発注が15機、オプションが5機で、国内線の需給調整を目的に導入する。
既存のエンブラエル機では、日本航空(JAL/JL、9201)グループのジェイエア(JAR/XM)が、2016年5月10日に就航したエンブラエル190(E190)で、機内インターネット接続サービスを2022年12月26日から提供中。座席数100席未満の「リージョナル機」では日本初の取り組みとなった。現在は14機あるE190全機で利用できる。
E190-E2は、3機種で構成する次世代リージョナルジェット機「E2シリーズ」のうち、最初に商業運航を開始した機体で、2018年4月24日に就航。従来のE170とE175、E190、E195で構成する「Eジェット」の後継機で、E175-E2とE190-E2、E195-E2の3機種でシリーズを構成する。新型エンジンや新設計の主翼、主脚の格納した際のドアなどで、燃費を向上させた。E190-E2のメーカー標準座席数は1クラス106席、2クラス97席で、最大114席を設定できる。
E2のエンジンは、スペースジェットと同じく、低燃費と低騒音を特徴とする米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製GTFエンジンを採用。推力の違いにより、E175-E2がPW1700G、E190-E2とE195-E2がPW1900Gを搭載する。
ANAがE190-E2発注
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解説記事
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E2シリーズ
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