エアバスは現地時間3月15日、総2階建ての超大型機A380の飛行試験初号機(MSN1、登録記号F-WWOW)が14日に飛行したと発表した。同機がフライトするのは2022年以来3年ぶりとなった。

3年ぶりに復帰したエアバスのA380飛行試験初号機MSN1(同社のSNSから)
エアバスによると、システムのアップグレードや試験設備の更新など数カ月の準備を経てテストフライトに復帰。「運航中の機体が最高水準の安全性と信頼性を保ちながら飛行し続けるために、最新の開発成果を認証するために行われる」と、復帰の経緯を説明している。
航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、初号機は14日午前10時9分すぎにトゥールーズ・ブラニャック空港を離陸し、3時間18分ほど飛行して午後1時27分ごろ着陸した。
A380のエンジンは英ロールス・ロイス製Trent 900(トレント900)と、米エンジンアライアンス製GP7200を選択できるが、初号機はTrent 900を採用している。
A380の初飛行は初飛行は2005年4月27日で、量産初号機(MSN3、9V-SKA、解体済み)は2007年10月15日にシンガポール航空(SIA/SQ)が受領した。最終号機(MSN272、A6-EVS)はエミレーツ航空(UAE/EK)へ2021年12月16日に引き渡され、エアバスが顧客へ納入したA380としては251機目となった。
日本では全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が、2016年1月29日にA380を3機発注。成田-ホノルル線の専用機材で、青(ANAブルー)の初号機(MSN262、JA381A)が2019年5月24日、深緑(エメラルドグリーン)の2号機(MSN263、JA382A)が同年6月18日、オレンジ(サンセットオレンジ)の3号機(MSN266、JA383A)が2023年10月20日に就航している。

2017年のパリ航空ショーで公開されたA380のMSN4を使ったA380plusのコンセプトモデル。受注獲得には至っていない=17年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

2017年のパリ航空ショーで飛行展示を披露するエアバスのA380飛行試験初号機MSN1=17年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
エアバスは2017年6月に、A380の改良版「A380plus」の開発調査を発表したものの、受注獲得には至っていない。大型ウイングレットなどを装備することで燃料消費量を最大4%抑え、客室内の改良と合わせると運航コストを1席あたり13%削減できると試算していた。
エアバスのギヨム・フォーリCEO(最高経営責任者)は、A380の生産完了が決まった2019年に500席クラスの機体について「需要が少ない」と発言。直接の後継機開発に否定的な考えを示した。今月12日に都内でAviation Wireなどの取材に応じた国際戦略を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデントのヴァウター・ファン・ヴェルシュ氏も、国内では日本航空(JAL/JL、9201)が導入しているA350-1000を上回る超大型機は計画していないと当紙に回答した。

3年ぶりに復帰したエアバスのA380飛行試験初号機MSN1(同社のSNSから)

3年ぶりに復帰したエアバスのA380飛行試験初号機MSN1(同社のSNSから)

3年ぶりに復帰したエアバスのA380飛行試験初号機MSN1のクルー(同社のSNSから)
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