エアバスで国際戦略を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデントのヴァウター・ファン・ヴェルシュ氏は、航空機の納入遅延やエンジン・部品不足といったサプライチェーンの混乱が続いている現状について「依然として厳しい状況にある」との認識を示した。エアバスはマルチソーシング(調達先の拡大)などを進めることで、遅延が生じた際も極力短縮し、機体引き渡しの安定化を図る。

都内で取材に応じるエアバスのヴァウター・ファン・ヴェルシュ国際戦略担当エグゼクティブ・バイスプレジデント=25年3月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
都内で3月12日に、Aviation Wireなどの取材に応じたヴェルシュ氏は、「業界全体がコロナ影響からの回復過程にあり、サプライチェーンの混乱が完全に解消されたわけではない」と指摘。「エンジンやシートといった特定の部品がボトルネックになっており、依然として厳しい状況にある」と説明した。
エアバスは、部品の供給元を複数化するマルチソーシングを進めるなどの対策を講じているという。「若干の改善も見られるが、引き続き最優先課題として取り組んでいく」と述べ、当面はこうした状況が続く可能性があるとの見方を示した。
こうした中、日本企業がエアバスのサプライヤーとして存在感を増していると、ヴェルシュ氏は指摘。「日本からの調達額は、最新の数字で23億ドルを超えている。日本は調達額で世界トップ10に入っており、非常に重要なサプライチェーンを有する国だ」と述べた。

トゥールーズで最終組立が進むエアバスA350=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
2024年の納入実績は766機と4年連続で前年を上回り、6年連続で競合のボーイングを上回った。一方で、サプライチェーンの混乱が続けば、機材納入の遅れが航空会社の戦略にも影響を与えかねない。ヴェルシュ氏は「納入を迅速化し、顧客に安定して機材を提供できるよう努める」と強調した。
IATA(国際航空運送協会)が2024年12月に発表した今年の見通しでも、サプライチェーンの混乱は当面続くと予測されており、機体の納入遅延や部品不足が航空会社の機材更新や路線拡大の妨げになっている。エンジンメーカーも、こうした混乱は当面続くとの見方だ。中大型機向けエンジンは、近年ボーイング向けが主体となっているGEエアロスペースも、原材料の確保競争が激化していることを指摘。GE自身はエンジンに起因する機体の納入遅延が起きないように対応しているものの、業界全体の供給体制の回復には、2-3年の時間が必要になる可能性があるとみている。
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