エンブラエルは2月25日、ANAホールディングス(ANAHD、9202)がE190-E2を最大20機発注したと発表した。確定発注は15機、オプションが5機で、2028年から引き渡しを予定している。ANAがエンブラエル機を発注するのは初めてで、E2シリーズを日本の航空会社が発注するのも初となる。

ANAのE190-E2(イメージ、エンブラエル提供)
E190-E2の座席数は未定。国内では日本航空(JAL/JL、9201)傘下のジェイエア(JAR/XM)が運航するE190の座席数が2クラス95席(クラスJ 15席、普通席80席)となっており、今後モノクラスと複数クラスを比較し、採算性が見込めるレイアウトを採用する。
航続距離は最大5278キロで、ANAHD傘下の全日本空輸(ANA/NH)が国内線で運航しているボーイング737-800型機(2クラス166席)の3900キロよりも長く、同じく国内線機材のエアバスA321neoの5130キロとほぼ同じとなる。現時点で投入路線は決まっていないが、航続距離が前世代機E190の4537キロより長いことから、これまで空白だった100席クラスの機材として導入するとともに、従来とは異なる路線の可能性も検討していく。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を終え滑走路に進入するMRJ=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAは、三菱重工業(7011)が開発を中止した90席クラスの国産リージョナルジェット「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を、ローンチカスタマーとして確定15機とオプション10機の最大25機を発注していたが、2023年2月7日の開発中止発表前から、機材計画は別立てとされており、今回も現在の需給バランスを基に発注数を決めている。
E190-E2は、3機種で構成する次世代リージョナルジェット機「E2シリーズ」のうち、最初に商業運航を開始した機体で、2018年4月24日に就航。従来のエンブラエル170(E170)とE175、E190、E195で構成する「Eジェット」の後継機で、E175-E2とE190-E2、E195-E2の3機種でシリーズを構成する。新型エンジンや新設計の主翼、主脚の格納した際のドアなどで、燃費を向上させた。E190-E2のメーカー標準座席数は1クラス106席、2クラス97席で、最大114席を設定できる。
E2のエンジンは、スペースジェットと同じく、低燃費と低騒音を特徴とする米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製GTFエンジンを採用。推力の違いにより、E175-E2がPW1700G、E190-E2とE195-E2がPW1900Gを搭載する。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を終えて着陸するE190-E2=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

E190-E2飛行試験機の機内=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
従来より大型化した頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)は、機内持ち込みが可能なローラー付きのスーツケースを4つ収納できるようになっている。各席に電源コンセントを設け、照明にはLEDを採用するなど、近年の客室に求められる装備を網羅している。
エンブラエルによると、オプションでパナソニック コネクトの米国グループ会社パナソニック アビオニクス製機内インターネット接続サービスも用意しているという。
ANAは、今後の日本の人口減少をはじめとする国内線市場の将来的な縮小を視野に、100席クラスのE190-E2を活用することで、国内線ネットワークの安定的な維持を図る。
日本の航空会社では、ジェイエアとフジドリームエアラインズ(FDA/JH)が、ともに2009年からEジェットを運航している。

ANAのE190-E2(イメージ、エンブラエル提供)

ANAのE190-E2(イメージ、エンブラエル提供)

ANAのE190-E2(イメージ、エンブラエル提供)

ANAのE190-E2(イメージ、エンブラエル提供)
解説記事
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ANAの発表
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E2シリーズ
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エンブラエルCEOの会見
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・エンブラエル、次世代ターボプロップ計画「エンジンの解決策見つかっていない」(23年5月26日)