ANA、過去最多77機発注 E190-E2国内初導入、超長距離A321XLRをピーチに

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)は2月25日、ボーイング787-9型機やエンブラエルE190-E2型機を含む最大77機を発注すると発表した。確定発注が68機、オプションが9機で、一度の発注機数としては過去最多となり、発注総額はカタログ価格換算で約2兆1580億円に上る。航空需要の回復と成長を見据え、低燃費機材の比率を高めるとともに、国際線と国内線の事業拡大を進める。

 ブラジルのエンブラエルが開発した次世代リージョナルジェット機のE190-E2と、グループのLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)が運航するエアバスA321XLRは、国内初導入となる。

ANAが国内初導入するE190-E2=25年2月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
E190-E2を初導入
ピーチがA321XLR初導入

E190-E2を初導入

 今回発注する機材は、787-9が18機(全機確定発注)で2028年度から2031年度にかけて受領予定。737-8(737 MAX 8)は12機(確定発注8機、オプション4機)を2029年度から2033年度にかけて導入する。A321neoはANA向け14機、ピーチ向け10機の計24機(全機確定発注)を2030年度から2032年度に受領予定で、ピーチは航続距離の長いA321XLRを2032年度に3機(全機確定発注)導入する。

ANAが国内初導入するE190-E2(手前から2番目)やピーチが国内初導入するA321XLR(手前)などの模型=25年2月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 国内初導入となるE190-E2を20機発注し、確定発注が15機、オプションが5機。100席クラスの最新鋭リージョナルジェットで、国内線の需給調整を目的に、2028年度から2032年度にかけて受領する。

 E190-E2の座席数は未定。国内では日本航空(JAL/JL、9201)傘下のジェイエア(JAR/XM)が運航するE190の座席数が2クラス95席(クラスJ 15席、普通席80席)となっており、今後モノクラスと複数クラスを比較し、採算性が見込めるレイアウトを採用する。現時点で投入路線は決まっていないが、航続距離が5278キロと従来のE190より伸びることから、これまで空白だった100席クラスの機材として導入するとともに、従来とは異なる路線の可能性も検討していく。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露するMRJ=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAは、三菱重工業(7011)が開発を中止した90席クラスの国産リージョナルジェット「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を、ローンチカスタマーとして確定15機とオプション10機の最大25機を発注していたが、2023年2月7日の開発中止発表前から、機材計画は別立てとされており、今回も現在の需給バランスを基に発注数を決めている。

 18機発注した787-9のエンジンは、すべてGE製GEnxを選定。国際線の成長領域と位置づけるアジア-北米路線の強化や、成田空港の再拡張を見据えた追加発注で、国際線の供給量を増やす。2030年度の座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は、2023年度比で約1.5倍になる見通し。受領最終年度は787就航から20年を迎える2031年度を計画しているが、今回の発注分は機材更新ではなく、機数は純増になる見通し。

 各機種のカタログ価格は、787-9が18機で約1兆420億円、737-8が12機で約2860億円、A321neoは24機で約5040億円、A321XLRが3機で約770億円、E190-E2が20機で約2490億円となるが、このうちANA向けの14機のA321neoはエンジン選定中のためエンジン価格は含まれず、その他の機種は機体とエンジンの合算となる。実際の購入価格は数量ディスカウントなどさまざまな条件により、カタログ価格とは異なる。今回も公表された金額を下回る価格で契約を結んだとみられる。

ANAが追加発注するGEnx搭載の787-9=PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

ANAが追加発注するA321neo=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの737 MAX(イメージ、ボーイング提供)

ピーチがA321XLR初導入

 LCCのピーチは、現在運航中の機材の一部を、最大11時間運航できる3機のA321XLRや、10機導入するA321neoへ更新。A321XLRは航続距離が8704キロに達し、東南アジアやオセアニア方面への路線拡大が可能となる。

ピーチのA321XLR(イメージ、エアバス提供)

 ピーチはすでにA321LRを3機導入し、関西-バンコク線、シンガポール線を中距離国際線として運航している。A321XLRはA321LRの後継機となるとともに、さらなる長距離路線も就航が可能になる。

 今回の発注を含め、ANAグループの2030年度の保有機数は約320機となる見込み。ボーイング787シリーズは約120機体制となり、低燃費機材の比率は91%まで向上する。

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