エアライン, 機体, 解説・コラム — 2025年1月29日 12:06 JST

米ブームXB-1、初の超音速飛行成功 JALが出資

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 超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は現地時間1月28日(日本時間29日)、技術実証機「XB-1」(登録記号N990XB)による初の超音速飛行に成功した。米国で初めて民間機による超音速飛行が実現した。

米国の民間機初の超音速飛行に成功したブームの技術実証機XB-1(同社提供)

—記事の概要—
マッハ1.122達成
オーバーチュアはアフターバーナーなし

マッハ1.122達成

 XB-1は2024年3月22日に初飛行し、これまでに11回の有人試験飛行をカリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港を拠点に実施。今回もモハベから離陸し、高度3万5290フィートに達した後、マッハ1.122まで加速して音速の壁を初めて突破した。チーフテストパイロットのトリスタン“ゼペット”ブランデンブルク氏が操縦した。

ブームの技術実証機XB-1が試験飛行の拠点とするモハベ空港・宇宙港(同社提供)

 2人乗りのXB-1は主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使った超音速飛行の実証を進め、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。

 ブームを創業したブレイク・ショールCEO(最高経営責任者)は「XB-1の超音速飛行は、乗客を乗せた超音速飛行の技術が実現可能であることを示している」と述べ、「才能と熱意に溢れた少数のエンジニアたちが、かつては政府と数十億ドルの予算を要したことを成し遂げた。次にXB-1の技術を拡大し、超音速旅客機オーバーチュアの開発を進めていく。私たちの究極の目標は、超音速飛行のメリットをすべての人に提供することだ」とコメントした。

 また、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)の元機長で、2003年にコンコルドのラストフライトを操縦したマイク・バニスター氏は「コンコルドの後継機として私が第一候補に挙げるのがオーバーチュアで、持続可能な超音速飛行の実現に向けて着実に前進している」と祝辞を送った。

ブームの技術実証機XB-1米国の民間機初の超音速飛行に成功したテストパイロットのトリスタン“ゼペット”ブランデンブルク氏(同社提供)

米国の民間機初の超音速飛行に成功したブームの技術実証機XB-1(同社提供)

オーバーチュアはアフターバーナーなし

 オーバーチュアはエンジンが4基となり、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。座席数はビジネスクラスタイプのもので64席から88席を想定。燃料はSAF(持続可能な航空燃料)を使用する計画で、就航時からネットゼロ(実質ゼロ)・カーボン達成を目指す。

グリーンズボロで最終組立が行われるブームの超音速機オーバーチュアのイメージ(同社提供)

 全長は205フィート(約62メートル)で、コンコルドとほば同じ。パイロットは2人、客室乗務員は最大4人を想定しており、スピードはマッハ1.7、航続距離は4250海里(7871キロ)を計画を計画している。

 XB-1の試験飛行で検証された技術のうち、オーバーチュアにも使われるものは、1)AR(拡張現実)ビジョンシステム、2)デジタル最適化された空力特性、3)炭素繊維複合材、4)超音速インテークの4つとなる。

 ブームには日本航空(JAL/JL、9201)も出資しており、量産機のオーバーチュアはアメリカン航空(AAL/AA)やユナイテッド航空(UAL/UA)などから予約を含めると計130機受注。

 ノースカロライナ州グリーンズボロのピードモント・トライアド国際空港に、製造施設「オーバーチュア・スーパーファクトリー」を建設。年間66機の生産レートを計画している。同空港には、本田技研工業(7267)の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が、小型ビジネスジェット機「ホンダジェット(HondaJet)」の製造拠点を構えている。

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