IATA(国際航空運送協会)は現地時間11月22日、スペイン政府が欧州法を無視してスペイン国内の乗客の手荷物料金を撤廃し、航空会社に1億7900万ユーロ(約274億円)の罰金を科す決定を下したことを非難した。この決定は消費者保護を目的としているが、IATAは「旅行者の選択肢を奪い、航空業界全体の効率に悪影響を及ぼす」として反対。IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は「次はホテルの宿泊客全員に朝食代を支払わせるのか」と痛烈に批判した。
—記事の概要—
・「旅行者の選択肢奪う」
・「選択肢が減り、料金だけ上がる
・10年前は却下
「旅行者の選択肢奪う」
ウォルシュ事務総長は「驚くべき決定だ。消費者の利益を守るどころか、選択肢を求める旅行者に対する侮辱だ。すべての航空会社に機内持ち込み手荷物料金の徴収を禁止することは、そのコストが自動的にすべての航空券に組み込まれることを意味する。次はホテルの宿泊客全員に朝食代を支払わせるのか。コンサートのチケット購入時に、全員にクローク代を支払わせるのか」と、スペイン政府を強く批判した。
スペイン政府による今回の決定で、すべての航空会社は機内持ち込み手荷物に対し、追加料金を徴収することが禁じられる。IATAは、この規制が航空会社の運営効率や収益モデルに大きな悪影響を及ぼすと主張。特に、LCC(低コスト航空会社)は手荷物のオプション料金が重要な収益源であり、運賃を抑えつつ、旅行者に選択肢を提供するモデルの中核を成している。
IATAは、手荷物料金を一律に禁止すれば、そのコストはすべての航空券に転嫁されると警告。これにより、手荷物を持ち込まない旅行者も、一律で料金負担を強いられる状況が生じる可能性がある。
「選択肢が減り、料金だけ上がる」
IATAが第三者に委託し、スペインを訪れた旅行者に実施した調査では、全体の97%が直近の旅行に満足していたという。航空券は可能な限り最低価格を支払い、必要なオプション料金を支払うことを希望する人が65%で、航空会社のオプション料金に透明性があるとする人が66%、空の旅はコストパフォーマンスが高いとする人が78%、航空会社から商品やサービスの十分な情報を得ているとする人が74%だったという。
IATAによると、これらの調査結果は、EU(欧州連合)の行政執行機関であるEC(欧州委員会)が実施した最新の「ユーロバロメーター調査」と一致しており、欧州全域の旅行者の89%が、手荷物許容量について、十分な情報を得ていると回答しているという。
また、手荷物を機内に持ち込む乗客が増えると搭乗時間が延び、航空機の運航効率が低下する懸念もあるとしている。ウォルシュ事務総長は「選択肢が減るのに料金だけが上がるのは、規制がもたらす最悪の結果だ」と批判した。
10年前は却下
スペイン政府は2010年にも、かつてファシスト独裁政権時代に制定された法律を根拠に、同様の罰金と規制を航空会社に課そうとしたが、欧州司法裁判所に却下されている。
ウォルシュ事務総長は「彼らは一度失敗し、また失敗するだろう。スペインの観光産業はGDP(国内総生産)の13%近くを占めるまでに成長しており、旅行者の8割は空路で到着し、多くの人が予算を気にしている。LCCの運賃は、観光分野の経済成長に大きな役割を果たしてきた」と指摘した。
「欧州司法裁判所は、10年前にこの結論を出している」と強調した。
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