企業, 機体 — 2024年10月16日 16:30 JST

エアバスと東芝、次世代水素機に超電導技術 2040年までに実用化へ

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 エアバス子会社で次世代航空機を開発するエアバス・アップネクストは10月16日、東芝グループでエネルギー事業を展開する東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS、川崎市)と水素航空機開発に向けた超電導モーター技術の共同研究で協定を締結した。液体水素を使った「超電導技術」を活用するもので、エネルギー効率と性能の大幅な向上につながる。航空業界は脱炭素化を進めており、両社は2040年までに次世代機の実用化を目指す。

水素航空機開発への超電導モーター技術共同研究で協定を締結したエアバスのオムバッハ氏(左から2人目)と東芝ESSの竹内氏(右から2人目)=24年10月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 今回の共同研究で、次世代機に使う2MW(メガワット)の超電導モーターの開発を目指す。エアバス・アップネクストは、2MW級の超電導電気推進システムを使った実証機「クライオプロップ」の開発を進めており、動力として東芝ESSが開発する2MW級の超電導モーターを活用する。

 エアバスのシニアバイスプレジデント 兼 将来技術研究責任者のグゼゴルツ・オムバッハ氏は、東芝をパートナーに選んだ理由について,東芝が超電導技術を50年以上研究しているとした上で、「信頼できるパートナーで、脱炭素化へ東芝も同じビジョンをもっている」と説明。両社の技術を使った実証機を2030年までに飛行させ、2040年までに新機材に活用したいと述べた。

 東芝ESSパワーシステム事業部バイスプレジデントの竹内努取締役は、超伝導モーターについて「航空機の未来を形成する技術。航空機産業の脱炭素化にもつながる」と語った。

 航空業界は、2050年にCO2(二酸化炭素)の排出を実質ゼロにする目標を掲げ、脱炭素化へ取り組んでいる。水素航空機は、脱炭素化を実現する技術のひとつだ。超電導技術は、マイナス253度の液体水素を燃料として使用するほか、電気推進システムの効率的な冷却にも活用する。両社によると、超低温技術は航空機の電動化時に電気システムのエネルギー損失がほとんどなく送電できるという。エネルギー効率などの大幅に向上により、水素航空機に利点をもたらすと説明している。

 両社の協定は、東京ビッグサイトで同日に開幕した航空宇宙防衛分野の展示会「JA2024(2024年国際航空宇宙展)」で締結。エアバスが都内に開設した研究開発拠点「エアバス・テックハブ・ジャパン」で進めるプロジェクトの一環で、今回が初の外部とのパートナーシップとなる。

東芝ESSの超電導モーター技術を活用したエアバスの次世代機エンジン(イメージ、エアバス提供)

エアバスの次世代機エンジン模型=24年10月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

エアバスの次世代機エンジンに活用する東芝ESSの2MW級超電導モーターの試作機模型=24年10月16日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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Airbus
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