日本航空(JAL/JL、9201)は10月7日、国際線の乗客にA5ランクの和牛を販売する新サービスを始めた。羽田・成田発の米国・シンガポール行きが対象で、輸出時に必要な検疫手続きをJALが代行し、JA全農ミートフーズ(東京・港区)とともにサービスを提供する。同サービスは傘下LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)も導入済みで、米国やアジアからの訪日客や、現地の商談相手などに人気のある和牛の売り込みを強化する。
—記事の概要—
・オンライン注文→空港で手荷物預け入れ
・課題は多言語対応
オンライン注文→空港で手荷物預け入れ
新サービス「JAL和牛お土産サービス」で販売するのはA5ランクの鹿児島黒牛と北海道和牛で、JA全農が調達した和牛を提供する。搭乗便の出発48時間前までに、JALの産直オンラインショップ「SORAKARA OTODOKE」で注文する。出発当日に空港出発ロビーのJAL ABCカウンターで受け取り、手荷物として預けてもらう。手荷物として和牛を持ち出す場合に必要な証明書の取得など、輸出検疫手続きはJALが代行する。また和牛には公的書類を同梱しており、到着空港での輸入検疫も免除となる。
出荷作業はJALカーゴサービス(JCG)が担い、注文された和牛を公的書類とマイナス51度の保冷剤、パッケージ内の温度推移を示すチップなどと同梱する。チップは5度以上の温度が続くと赤い印を表示する仕組みで、20分、2時間、8時間の経過ごとに1つずつ表示。赤い印が表示されていない場合、鮮度が保たれていることを示す。
作業は成田発がZIPと同じく空港に隣接する成田市公設地方卸売市場(成田市場)で、羽田発は空港近くの物流拠点・三井不動産インダストリアルパーク(MFIP)羽田で進め、各空港にあるJAL ABCのカウンターへ出発3時間前をめどに運ぶ。利用客はJAL ABCカウンターで受け取り、手荷物として預ける。現地空港着後は通常の手荷物として受け取る。
対象路線は、米国線がシカゴ、ダラス、ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、ホノルル、グアム行きの12路線14便と、羽田・成田発シンガポール行き2路線3便の計14路線17便。共同運航(コードシェア)便は対象外で、米国・シンガポールで乗り継ぐ場合は利用できない。
購入できる量や取扱品は路線により異なり、米国路線は1人あたり最大22.6キロまで、シンガポール線は同5.0キロまで。米国路線はブロック、シンガポール線はステーキ用、しゃぶしゃぶ・すき焼き用のスライスを扱う。
価格は米国路線のブロック0.7キロが2万200円から、シンガポール線のステーキ用1.0キロが2万3200円から、スライスは1.0キロ2万2500円から。免税品ではないため、価格には消費税が含まれる。
ZIPAIRは同様のサービスを今年1月にスタート。成田発ロサンゼルス行き、サンフランシスコ行き、サンノゼ行き、ホノルル行きの米国4路線とシンガポール行きの計5路線5便が対象で、JALグループとして19路線22便でサービスを展開する。
課題は多言語対応
羽田空港近くの物流拠点・MFIPで取材に応じたJAL貨物郵便本部 事業推進部の梅原秀彦部長は今回のサービスについて、ポイントは「厳選された高品質」「ストレスフリー」「経済性」の3つと説明。JA全農の高品質な和牛を、現地の市価よりも2-3割程度安く提供し、輸送や検疫などをJALが代行する、とアピールした。
米国行きではブロック肉、シンガポール行きではステーキ用とスライス肉を提供する。行き先により種類が異なる点について、梅原部長は「政府間の取り決めにより、米国へはブロック肉の輸出しかできない。シンガポールは小分けにも対応するので、食べやすいステーキ肉とスライス肉を用意する」と説明した。
今後は他ブランド和牛に加え、他品目への展開も視野に入れる。またZIPでは月間40-50件、150万円程度を売り上げていることから、対象便数が約3倍のJALでは500万円程度の売上を見込む。
一方、販売チャネルの「SORAKARA OTODOKE」は現在日本語のみで、多言語には対応していない。梅原部長は英語未対応の現状を課題と認識しており、2025年度をめどに外国語へ対応させる考えを示した。現状では「日本語を読み書きできる人が利用するほか、日本人ビジネスマンが商談相手に持っていくなどの利用方法が考えられる」(梅原部長)という。
関連リンク
SORAKARA OTODOKE
日本航空
JA全農ミートフーズ
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