超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は、3回目となる超音速飛行の技術実証機「XB-1」(登録記号N990XB)の飛行試験に成功した。日本航空(JAL/JL、9201)も出資しており、年末までに超音速飛行の達成を目指す。
—記事の概要—
・年内に超音速目指す
・ユナイテッド航空など確定発注
年内に超音速目指す
3回目の飛行試験は、現地時間9月13日に実施。カリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で行われ、チーフテストパイロットのトリスタン“ジェペット”ブランデンブルグ氏が操縦桿を握った。最高高度は1万5000フィート(約4572メートル)、速度は232ノット(約430キロ)に達し、総飛行時間は32分だった。
今回は主要システムと性能の試験が主な目的で、飛行中に予想される最大のピッチとヨーが生じた状況下での操縦も行われた。また、コックピットの温度と圧力を制御する環境制御システム(ECS)の性能も確認した。
XB-1は、今年3月22日に初飛行に成功。2回目は8月26日に行われ、2週間強で3回目のフライトを実施した。今回は2回目で実証された安定性増強システムの検証も続けられたほか、着陸装置は2回目の飛行 (215ノット) よりも高速で展開・格納されたという。着陸装置を上下させる最大安全速度の225ノットまで加速する3段階のうち、2段階目に入ったという。
XB-1の飛行試験は、マッハ1を超える速度での性能と操縦性を確認するため、飛行範囲を順次拡大しながら続けていく。ブームによると、超音速に達するまでに合計約10回行われる予定だという。
ユナイテッド航空など確定発注
実証機のXB-1は2人乗りで、主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2(時速換算2335キロ)の実現を目指す。ブームは、XB-1で超音速飛行の技術を検証し、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。英仏が共同開発した「コンコルド」は2003年11月26日のフライトを最後に退役しており、オーバーチュアが計画通り2029年に就航すると、四半世紀ぶりの超音速機による旅客便の復活となる。
オーバーチュア初の確定発注は、ユナイテッド航空(UAL/UA)から2021年6月3日に15機を獲得し、アメリカン航空(AAL/AA)も最大20機の発注で、追加40機分のオプション付きの契約を結んでいる。JALは2017年12月にブームと提携して1000万ドル(当時の円換算で約11億2500万円)を出資し、将来の優先発注権を20機分確保している。
オーバーチュアの現時点での仕様は、巡航速度が洋上で超音速のマッハ1.7、陸上で亜音速機のマッハ0.94、ペイロード航続距離は4250海里(7871キロ)を計画。エンジンは4基で、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。
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