8月にブラジルのサンパウロ州で地域航空会社ボエパス航空(PTB/2Z)のカスカベル発サンパウロ(グアルーリョス)行き2Z2283便(ATR72-500型機、1クラス68席、登録記号PS-VPB)が墜落し、乗客57人と乗員4人の計61人全員が死亡した事故で、ブラジル空軍の航空事故調査防止センター(CENIPA)は現地時間9月6日(日本時間7日)、暫定報告書を公表した。機体のデアイシング(除氷)装置に何らかの不具合が起きた可能性があるとして、今後の調査を進める。
—記事の概要—
・デアイシング装置の不具合言及
・新たなデータ収集中
・地上衝突までの経緯
・管制との主な交信
デアイシング装置の不具合言及
2283便は現地時間8月9日午前11時46分に、ブラジル南部パラナ州のカスカベル空港を離陸し、サンパウロのグアルーリョス国際空港へ向かった。報告書によると、午後1時20分までは通常通り飛行しており、午後1時21分以降、サンパウロ進入管制からの呼びかけに応答しなくなり、地面に衝突したのは午後1時22分だった。
高度1万7000フィート(約5181メートル)を巡航飛行中、制御不能に陥って失速状態となり、サンパウロ州ヴィニェード市の住宅地に墜落するまでフラットスピン状態が続いた。
飛行中の構造分離の形跡は発見されておらず、翼と尾翼部分は衝突後の火災で焼失。破壊と炭化の度合いがひどく、機体の一部の部品やシステムを調べることが困難だったという。
また、飛行中の火災の形跡は認められず、衝突直後に機体が地面を強く擦ったことが発火原因との見方を示した。
機体から改修されたフライトデータレコーダー(FDR)とコックピットボイスレコーダー(CVR)を解析したところ、CVRにはパイロットがデアイシング装置の不具合に言及していたことが確認され、FDRの記録には主翼のデアイシング装置のスイッチが何度もオン・オフされていたことも判明した。このスイッチの動作が人為的なものか、システムの故障かはわかっていない。
調査責任者のパウロ・メンデス・フロエス中佐は「事故の要因は一つではなく、いくつかの要因があることを強調することが重要だ。当該機では、機体の制御不能は氷の形成に好都合な条件下の飛行中に発生したが、緊急事態宣言や悪天候の報告はなかった」と説明した。
担当調査官によると「パイロットの総飛行時間は5000時間を超え、すべての有効なライセンスと証明書を持っていた。2010年に製造された当該機は、アイシングコンディションでの飛行が認定されており、パイロットはこの条件下で飛行するための訓練を受けていた」という。
新たなデータ収集中
フロエス中佐は「最終報告書に記載される結論の正確性と信頼性を保証するため、分析を裏付ける新たなデータを収集中だ」と述べた。
最終報告書で提示される結論の正確性と信頼性を確保し、分析を裏付けるために、新たなデータ収集が進められている。
FDRとCVRの記録、航空会社と機体メーカーから収集した情報に基づき、調査は「人的要因」「物質的要因」「運用要因」の主に3点を中心に進められる。
*CENIPAが暫定報告書で公表した地上衝突までの経緯と主な交信記録は下記の通り。
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