EASA(欧州航空安全庁)は現地時間9月5日、エアバスA350-1000型機向けエンジンの英ロールス・ロイス(RR)製「Trent XWB-97(トレントXWB-97)」に対し、AD(耐空性改善命令)を出した。キャセイパシフィック航空(CPA/CX)のA350-1000で、フューエルマニホールド(燃料分配器)のチューブが損傷していたことから、ADが有効になる9日から30日以内に当該箇所を検査するよう航空会社に義務づけた。
—記事の概要—
・フレキシブルチューブが損傷
・30日以内に検査
フレキシブルチューブが損傷
ADによる検査対象は、A350-1000向けのTrent XWB-97で、A350-900向けのエンジンは対象外。キャセイが運航するA350-1000のエンジン不具合は、2日の香港発チューリッヒ行きCX383便(A350-1000、登録記号B-LXI)で発生した。RRによると、フューエルマニホールドのフレキシブルチューブが損傷しており、一時的なエンジン火災やエンジンナセルの内外装の熱損傷につながる可能性があった。
当該機ではこれらを防ぐため、2基あるエンジンのうち、1基が強制的に停止したといい、RRは改修指示書「サービスブリテン(SB)」を5日に発行した。
RRでは、不具合の根本的な原因を現在も調査中。今回のSBでは、フューエルマニホールドのメイン燃料ホースの目視点検と寸法検査を1回実施するよう、航空会社など運航者に指示した。今回の措置は暫定的で、必要に応じて部品交換を実施し、今後追加措置が生じる可能性もあるという。
キャセイのA350-1000は、2018年7月1日に就航。香港-台北線のCX484/485便が初便となった。日本路線への投入は同月17日の香港-関西線から始め、A350-1000による日本への初の商業飛行となった(関連記事1)。
30日以内に検査
検査の実施期限は、エンジンの運転時間により3つのグループに分けられた。グループ1は、エンジンの運転時間が1万8500時間以上、かつ工場で2回以上の修理(修理・点検・整備・オーバーホール)が行われたエンジンで、ADが有効になる今月9日から3日以内に検査する必要がある。グループ2は、グループ1に属さないエンジンのうち、過去にオーバーホールなどの修理歴があるもので、7日以内に検査する。グループ3は、グループ1と2に該当しないエンジンで、30日以内に検査する必要がある。
日本国内の航空会社では、日本航空(JAL/JL、9201)がA350-1000を運航しており、発注済み13機のうち5機を受領して運航している。就航は今年1月24日で、グループ3のエンジンのみ。JALは5機の自主点検を4日に終えているが、EASAからADが出たことで、SBに基づいた追加検査を9日から30日以内に実施する。
JALはA350-1000に加え、別のエンジンであるTrent XWB-75を搭載したA350-900を国内線で15機運航しているが、自主点検を5日までに終えて全機に異常がないことを確認している(関連記事2)。今回のADはTrent XWB-97を対象としているため、追加検査はA350-1000のみ実施する。
A350-1000向けのTrent XWB-97は、A350-900向けのTrent XWB-84や-75などと比べ、新しい高温タービン技術やより大きなエンジンコア、ファンの空力特性の組み合わせで推力を増加させた。EASAの型式証明は、Trent XWB-75、-79、-79B、-84が2013年2月7日に、Trent XWB-97は4年後の2017年8月31日に取得している。
キャセイも全48機のA350を対象に自主点検を実施。A350-1000が18機、A350-900が30機で、部品交換が必要な15機を特定済みで、7日までに運航を再開する見通し。
関連リンク
EASA
Rolls-Royce
A350型機の機材メインテナンスの進捗と欠航状況についてのお知らせ(キャセイ)
キャセイパシフィック航空
日本航空
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