エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2024年8月20日 14:30 JST

ジャンボより長い胴体意識し操縦 特集・JAL坂本777運航乗員部長に聞く777-300ER初退役

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 2004年7月1日に就航した日本航空(JAL/JL、9201)のボーイング777-300ER型機に、初の退役機が生じる。13機ある中で、2005年7月26日に引き渡された4号機(登録記号JA734J)が、きょう8月20日のシドニー発羽田行きJL52便を最後に運航から離脱し、最初の退役となる。

JAL初の777-300ER退役機となるJA734Jを出迎えた777運航乗員部長を務める坂本竜一機長=24年8月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 当初の予定では、19日夕方に羽田へ戻る同じJL52便が、4号機最後の商業運航の予定だった。しかし、機材繰りの関係で20日も羽田-シドニー線を1往復することが決定。退役が1日延びることになったが、急きょ決まったため、社員有志による到着便の出迎えは予定通り行われた。

 ランプに降りた社員の中には、昨年の777-200ERの退役関連イベントなどで、JALの法被(はっぴ)を来て参加者を出迎えたり、下地島空港へのチャーターでは操縦桿を握った777運航乗員部の部長、坂本竜一機長の姿もあった。

 後継機のエアバスA350-1000型機が今年1月に就航し、777-300ER初の退役機が出て国際線フラッグシップの世代交代が本格化する中、坂本さんに777-300ER就航当時の様子などを聞いた。

段階踏みジャンボを置き換えた安定感

 「A350-1000も、もう5号機まで来てますからね」と話す坂本さんによると、777のパイロットは、徐々にA350や787といった機材への移行訓練に入りつつあるという。

羽田空港に到着するJALの777-300ER JA734Jによるシドニー発JL52便。ジャンボより長い胴体に気を遣ったという=24年8月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは777のうち、標準型の777-200、長胴型の777-300を国内線に投入後、国際線機材として777-200の航続距離延長型となる777-200ERと、777-300の航続距離を延ばした777-300ERの計4機種を導入。エンジンは777-200と-300がプラット&ホイットニー製PW4000、777-200ERと-300ERはGE製GE90を採用した。

 777-300ERの現行客室仕様「W84」は座席数が4クラス244席。ファースト8席、ビジネス49席、プレミアムエコノミー40席、エコノミー147席で、後継のA350-1000が就航するまでは、JALの国際線機材で唯一ファーストクラスがある機材だった。

 777-300ER以外の3機種はすでに退役済み。ジャンボの愛称で親しまれた747-400の後継機である777-300ERは13機あり、シンガポールなど中距離国際線に投入後、ニューヨークやロンドンなど長距離路線の運航を開始。2013年1月には、現在のシートを搭載した新仕様機「スカイスイート777」の改修初号機(JA731J)が就航し、2019年8月からは、同年就航したA350-900の内装と連続性のある色合いのインテリアに改修された機体が順次登場した。

JAL 777-300ERのファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JAL 777-300ERのビジネスクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ジャンボの後継機として導入されたが、「(777-200、-300、-200ERと)徐々にいろいろな機種が増えてきたので驚きはなかったのですが、やはりファーストクラスがあり、エンジンのファンが大きいですね」と、現行機のジェットエンジンでは最大級となるエンジンファンの大きさには驚いたという。

 一方で、双発機で長距離を飛ぶことに不安はなかったそうだ。「会社も我々もETOPS(イートップス、洋上を長時間飛行する際に必要な航空当局の承認)のポリシーなどに傾注していたこともあり、777-200ERもロンドン線に入っていたので、-300ERだから(不安になる)というのはなかったですね」と、段階を追って777を導入したことは、機体の信頼性の面でも大きな意味があったと振り返る。

長さと重さ実感

 双発機による長距離フライトに不安はなかったものの、「747-400(70.66メートル)より長いですからね」と、3メートル以上長い777-300ERの全長73.88メートル(242フィート4インチ)は、地上走行時に機を遣った。

羽田空港を離陸しシドニーへ向かうJALのJL51便に投入された777-300ER JA734J=24年8月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「エンジンが大きく胴体が長いので、いまは各空港の整備が進みカーブの部分が広くなりましたが、当時はそうでもないところもありました。コックピット内でカメラの映像を確認しながら、意図的に大回りするのは今までにない経験で、ジャンボより長いことはかなり意識していました」と、世界的に777-300ERの運航機数が増えると、空港の誘導路の改良が進んだ。

 タキシングに気を遣って離陸後は、機体の重さを感じた。「75万ポンドという非常に重いウェイトで離陸するので、特に欧州へ飛んでいく時は『パスが上がらないな、重いな』と感じましたね。滑走路長が長く必要なこともありますが、浮いた後も『重いんだな』と非常に感じました」。

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、各国の欧州路線はロシア上空が飛べないことが大きな痛手となっている。JALも例外ではなく、日本から欧州へ向かう往路はアラスカなどを飛ぶ北回り、復路は偏西風に乗る南回りと、世界一周ルートで運航している。このため、現在パイロットは長距離国際線の標準である3人編成「マルチクルー」より1人多い4人編成「ダブル」で乗務している。

 「(JALが)北回りで欧州に行っていたのは随分昔です。その時代より(機材や設備が)進んでいて、我々も安心して飛べるようになったと感じますが、(北極に近づくと)衛星との通信が途切れやすかったりと、陸地を飛ぶのとはちょっと違う感じです。777-200ERと比べると胴体が長いので、代替着陸する空港の候補も変わってきますね」と、飛行時間が伸びたことよりも、緊急時の対応に気を遣うという。

 退役が始まったとはいえ、A350-1000が3路線目の羽田-ロンドン線に入るのは今年度内で、あと2年程度は新旧のフラッグシップが飛ぶ状態が続く。777-200ERの末期と同様、国内線の一部便にも投入されており、JALの看板ろせんを20年間支えてきた777-300ERの活躍はまだまだ続く。

JA734Jのラストフライト
JL52 シドニー(20日08:15/08:16)→羽田(20日17:05/16:54予定)

羽田空港に到着したJAL初の777-300ER退役機となるJA734Jを見学する社員ら=24年8月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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(1)黒を基調としたビジネスクラス
(2)ワインレッドと黒のプレエコ
(3)エコノミーはA350と同じグレー系
(4)シックな壁面やウォシュレット完備の化粧室

機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
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動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
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