海上自衛隊のUS-2救難機の初号機(9901)が退役し、製造した新明和工業(7224)の甲南工場で8月7日、除籍セレモニーが行われた。今後は部品を有効活用するという。
US-2は水陸両用の救難飛行艇で、1976年から2017年まで運用されたUS-1Aの後継機として、1996年からUS-1A改として開発がスタート。今回除籍された9901号機は、試作1号機として製造され、2003年4月22日にロールアウトし、同年12月18日に甲南工場沖の海上で初飛行が行われた。
9901は2004年3月24日に防衛省(当時は防衛庁)へ納入され、試験を経て「US-2型救難飛行艇」に改称。2007年3月に海自岩国航空基地の第71航空隊に配備された。誕生の地である甲南工場には7月31日にフェリーされ、7日に除籍セレモニーが開かれた。
8日時点でUS-2は8号機(9908)まで引き渡されており、量産初号機となる通算3号機(9903)は2009年2月19日に防衛省へ納入された。一方、2015年4月28日に5号機(9905)が訓練中に大破して水没しており、9908は代替機として製造された。9901の除籍で稼働は6機となった。
新明和によると、US-2はUS-1Aをベースにした改造開発だったが、3大課題として「離着水時の操縦性改善」「搬送者の輸送環境の改善」「洋上救難能力の維持向上」があり、これらをクリアするためには新規開発に匹敵する苦労があったという。操縦システムにフライ・バイ・ワイヤを採用し、与圧キャビンやグラスコックピットを導入したほか、主翼や波消板、浮舟などが軽量化された。
一方で、為替が大きく円安に振れたことや部材費用の高騰、防衛省からまとまった数の受注が難しいといった要因で製造コストを抑えることが難しく、事業継続の困難さが常に課題となっている。
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