偶数年にロンドン近郊で開かれるファンボロー航空ショー。45回目となる今回は現地時間7月22日から26日まで開かれ、主催者側のまとめで815億ポンド(約16兆円)相当の取引が成立し、民間機は最初の4日間のトレードデーで260機の確定発注が入った。一方、防衛分野では日英伊3カ国が共同開発する次世代ステルス戦闘機プロジェクト「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」の最新の実物大モックアップがお披露目され、プログラムが順調に進んでいることを強調した。
7月に発足した英国のスターマー政権が、GCAPの共同開発を見直す可能性を報じたが、23日に英国防省で開かれた日英伊の防衛相会談では、GCAPの配備は従来通り2035年配備で一致した。
ファンボローでは、初日の22日に最新モックアップが披露され、日本と英国、イタリアの国旗や各国に引き渡されるデザインをイメージした映像が機体に映し出された。デルタ翼を採用し、従来よりも翼面積を広げた形状になっていた。
22日の会見には、英BAEシステムズ、伊レオナルド、三菱重工業(7011)のGCAP担当者が出席。BAEの未来戦闘航空システム担当マネージング・ディレクター、ハーマン・クレーセン氏は「日本やイタリアとの協力関係は非常に補完的だと感じている。それぞれが強みを持ち寄り、それぞれが長年にわたって投資をしてきたものを、このプログラムに結集させて解決策を構築し、創造していきたい」と述べた。
GCAPは、2021年から25年までが3カ国によるコンセプト策定と評価、2025年から35年が共同設計と開発、2035年から60年以降が生産期間となる。また、2035年以降も継続的に開発を続けていく。
今回新しいコンセプトモデルを発表したことで、2025年は政府と産業界の共同作業体制による設計・開発段階の開始を計画。「2025年という年は、私たちにとって非常に重要な節目であり、事実上、開発活動の設計が全面的に開始される時期だ」(クレーセン氏)と、来年からの本格開発に向けて各国政府や企業間の調整を進めていく。
日本では、ファンボローに先駆けて一般社団法人・日本航空宇宙工業会(SJAC)と三菱重工業(7011)が共同出資で設立した日本航空機産業振興(JAIEC、新宿区)が、7月10日から事業を開始。次期戦闘機と呼ぶGCAPのサプライチェーン強化などを目指す。
各国で開発主体となる企業は、機体を手掛ける3社のほか、エンジンはIHI(7013)と英ロールス・ロイス、伊アヴィオで、ミッションアビオニクスシステムは三菱電機(6503)と英国のレオナルドUK、レオナルドと伊エレットロニカが参画する。
英国とイタリアは、英独伊西の欧州4カ国が共同開発した戦闘機「ユーロファイター」の後継機として、2035年の就役を目指す次世代戦闘機「テンペスト」の開発を進めてきた。前回2022年開催のファンボロー航空ショーでは、BAEはテンペストの前部胴体を公開した。2022年12月に3カ国による共同開発を発表後はGCAPとなり、日本では航空自衛隊が運用しているF-2戦闘機の後継機となり、2035年までの開発・配備を目指す。
関連リンク
BAE Systems
Leonardo
三菱重工業
Team Tempest(Royal Air Force)
日本航空機産業振興
・次期戦闘機の新会社「日本航空機産業振興」事業開始 SJAC・三菱重工出資(24年7月10日)
次期戦闘機の動向
・防衛省、次期戦闘機に914億円 24年度予算案(23年12月24日)
・日英伊の次期戦闘機、BAEと三菱重工、レオナルドが3社協定合意(23年9月12日)
・日英伊の次期戦闘機、英国防省が1千億円超え大規模投資 35年配備へ(23年4月15日)
・次期戦闘機、模型を防衛展示会に出展 幕張メッセDSEI Japan(23年3月17日)
・次期戦闘機、三菱電機がレオナルドなどと協業契約 アビオニクスを共同開発(23年3月16日)
共同開発発表
・次期戦闘機、日英伊3カ国共同開発 F-2後継35年配備へ、米とは無人機開発(22年12月9日)
・IHI、次期戦闘機のエンジン参画 日英伊が共同開発(22年12月10日)
テンペスト
・英次世代戦闘機テンペスト、前部胴体を公開 日本も参画、5年以内に初飛行=ファンボロー航空ショー(22年7月21日)
・BAE、英次世代戦闘機テンペスト向け新工場(20年7月14日)