リージョナルジェット機の世界シェア1位を誇るブラジルのエンブラエルが、軍用輸送機の分野でも存在感を増している。双発の中型輸送機C-390「ミレニアム」で、ブラジルは空中給油・輸送型のKC-390を採用。ブラジルのほか、ポルトガル、ハンガリー、オランダ、オーストリア、チェコ、韓国が選定した。
ローンチカスタマーのブラジル空軍は2019年に導入を開始し、初のNATO(北大西洋条約機構)仕様機となるポルトガル空軍向けは2023年10月に就役。ブラジル空軍には6機を納入済みで、6月にはポルトガル空軍に2機目を引き渡した。
最大ペイロードは26トン、航続距離は26トン搭載時が2000キロ(1080海里)、フェリー時が6241キロ(3370海里)、最高巡航速度はマッハ0.80(470ノット)で、貨物や物資、部隊の輸送、捜索救助など、多目的に運用できる。ロッキード・マーチンのターボプロップ戦術輸送機C-130「ハーキュリーズ」の置き換えなどで採用が進んでいる。
6月時点での契約や契約見込みは、ブラジルが19機、ポルトガルが5機、ハンガリーが2機、オランダが5機、オーストリアが4機、チェコが2機で、アジア初の顧客となる韓国の機数は現時点で開示されてない。ブラジルとポルトガルはKC-390、ハンガリーとオランダ、オーストリア、チェコはC-390を選定した。
エンブラエルのジョアン・ボスコ・コスタ・ジュニア防衛・安全保障担当社長兼CEOは、現地時間7月22日に開幕するファンボロー航空ショーに先立ちブラジルで6月に開いた報道関係者向け説明会で、「多用途性、高い可用性、性能、信頼性、任務遂行能力に優れた航空機だ」とアピール。「ポルトガル空軍では初年度に600時間の飛行を計画していたが、実際には半年で達成した」と、ポルトガルのほかハンガリーとオランダ、オーストリア、チェコも加盟国であるNATO向けの機体が順調であることを強調した。
コスタ社長は「今後20年で490機の需要が見込める。戦術輸送機は機齢45年以上の機体が約260機ある」と、既存機の置き換えだけでもかなりのボリュームが見込めるという。戦略市場としてはNATOのほか、老朽化したAN-32の置き換えが迫るインド、C-130が老朽化しているサウジアラビアを挙げている。
米国についても重要視しており、空中給油用ブームの共同開発などを模索しているという。
また、海上パトロールに用いる哨戒型など派生型の検討も進めていくという。
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Embraer Defense & Security
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