官公庁, 空港, 解説・コラム — 2024年7月3日 22:09 JST

成田空港、集約新ターミナル「ロングピア型」に 2タミ南側、新駅開業で現駅閉鎖

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 成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)の田村明比古社長は7月3日、国土交通省を訪問し、空港の将来像を検討する「『新しい成田空港』構想」のとりまとめを同省航空局(JCAB)の平岡成哲局長へ報告した。「旅客ターミナル」「貨物施設」「空港アクセス」「地域共生・まちづくり」の4テーマで課題やなどを洗い出し、このうち現在3カ所ある旅客ターミナルは1カ所に集約。事業費は8000億円程度を想定する。鉄道駅は新駅開業後、現在の2駅を段階的に閉鎖する。

「『新しい成田空港』構想」のとりまとめで示した将来的なターミナル配置イメージ(NAAの資料から)

—記事の概要—
C滑走路新設後に集約
現在の2駅閉鎖し新駅に
新貨物地区でハブ目指す

C滑走路新設後に集約

 旅客ターミナルは、集約型の「ワンターミナル」へ再構築。2029年3月末に予定する第3滑走路(C滑走路)の新設後に段階的に集約する計画で、既存のターミナルを運用しながら段階的に集約させていく。シンプルで分かりやすい作りとするほか、乗り継ぎを同一ターミナル内で完結させることでハブ空港としての機能の向上も目指す。また、リソースの集約・共用化により、高効率な運用が可能となり、航空会社間の提携や規模の変化に柔軟に対応できるようになる。

 新ターミナルの候補地は、2023年3月の中間とりまとめから変更なく、現在の第2ターミナル(T2)の南側を候補地として整備(関連記事)。コンコースの本数を少なくできる「ロングピア型」を基本として検討を進め、延べ面積は95-115万平方メートル程度、固定ゲート数100程度を想定する。

 ロングピア型は、ドーハのハマド国際空港や米国のデトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港などが採用している。このほか、新イスタンブール空港などの「ショートピア型」、シンガポールのチャンギ国際空港などの「ピア+サテライト型」、米国のアトランタ国際空港などの「サテライト型」が検討された。

ワンターミナルの形状案(NAAの第6回検討会資料から)

現在の2駅閉鎖し新駅に

 成田空港へ乗り入れる鉄道の駅は現在、第1ターミナル地下の成田空港駅と、第2ターミナルの地下で第3ターミナルの最寄りにもなる空港第2ビル駅の2駅があり、JR東日本(東日本旅客鉄道)と京成電鉄(9009)が乗り入れている。

ワンターミナル化ステップ1で新駅供用開始を計画(NAAの第6回検討会資料から)

 ワンターミナル化を進める際は、2タミ南側に建設予定の新ターミナルの半分と新駅の供用を開始する「ステップ1」の段階で、成田空港駅を閉鎖。新ターミナルの建設が進んだ「ステップ2」で空港第2ビル駅も閉鎖する。

 その後の「ステップ3」では、外部環境や経営状況に応じて、1タミ跡地に本館やコンコースを増築する構想だが、鉄道駅はステップ1で開業する新駅のみとなる見通し。

新貨物地区でハブ目指す

 新しい貨物施設は、貨物上屋とフォワーダー施設を一体運用。効率化を図り、物流の無駄を削減する。圏央道からアクセスできる新貨物地区を整備し、空港隣接地と一体的に運用し、継越需要も取り込む東アジアの貨物ハブを目指す。

 空港アクセスは、NAAと国、鉄道事業者など関係者間で課題解決を進めていく。また、空港内の道路は周回型で速達製の高い道路に再編する。

 地域共生・まちづくりは、地域や空港従業員に住みやすい地域づくりと、空港を中心とした産業を誘致する「エアポートシティ」の実現を目指す(関連記事)。

  ◇

 すべての整備は2040年代に終了する見通し。現在の年間発着回数は34万回で、整備完了後は50万回に拡大。年間の旅客取り扱い能力は、現在の5700万人から7500万人に増加する見通し。年間の貨物取り扱い能力は、現在の240万トンから350万トンへの増加を見込む。

上空から見た成田空港=24年6月24日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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