機体, 空港, 解説・コラム — 2024年5月27日 11:49 JST

西久保会長「外国人が見たいのは日本らしい所」特集・ビジネスジェットで地域活性化

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 自衛隊と民間の共用空港で、ビジネスジェット(BJ)が5月25日に初めて乗り入れた茨城空港。運航したBJチャーター会社のマイクロジェット(東京・新宿)の西久保愼一会長は、スカイマーク(SKY/BC、9204)の社長を務めていた時から北関東へのアクセスなど、茨城空港の利便性に着目していた。

茨城空港で出発を待つマイクロジェットが運航する羽田行きのビジネスジェット「セスナ サイテーション ムスタング」=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 茨城空港の運用が見直されたのは2023年10月29日。茨城県と航空自衛隊百里基地、国土交通省東京航空局(TCAB)百里空港事務所の3者合意で、民間機の1時間あたりの着陸便数の見直しとともに、BJ受け入れも可能になった。インバウンド(訪日)需要が旺盛な今、西久保会長に茨城空港へBJが乗り入れるメリットを聞いた。

—記事の概要—
外国人が見たい日本
茨城は法人需要より富裕層

外国人が見たい日本

 「外国人が見たいのは日本らしい所」と西久保氏は断言する。「50カ国くらい行ったことがあるが、やはりその国らしいところにまず足を踏み入れていた」と、自身が海外を巡った際の経験を振り返り、「訪日外国人にウケる観光地」の要素として「日本らしさを感じられること」を挙げた。

マイクロジェットのムスタングの客室=24年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関西圏の主要観光地である大阪、京都、奈良、神戸を比較すると、観光庁による訪日客の消費動向調査で2015年まで都道府県別の訪問率4位だった奈良県が2016年以降は3位に浮上し、神戸を擁する兵庫県が4位と逆転。訪問率も横ばいで、神戸の“一人負け”が課題となっている。日本人にとってはおしゃれな港町で、主に明治時代の洋館が残る神戸は人気スポットの一つだが、外国人にはより日本らしさを感じられる地域が魅力的に映るようだ。

 「わざわざ外国人が都会の景色を見たいだろうか。茨城や鳥取であれば、外国人が見たいと思っていた日本の風景がすぐに見られる」と、訪日客がまず求めている観光スポットは、日本の自然そのものだと西久保氏は力説する。

 茨城空港から車で15分弱の距離に、東関東自動車道の茨城空港北インターチェンジがある。栃木県の日光など北関東や東北、北陸地方へ高速道路で向かうことができる。

 例えば日光東照宮へ車で向かう場合、茨城空港からは1時間50分で着くが、羽田や成田からだと2時間30分以上かかる。ターミナルも小規模で、機側へ車を横付けできない状況でも、ロスタイムはさほどなく、将来的には他空港と同様、ランプへ車を入れられるようになるだろう。

 マイクロジェットは2023年10月10日に事業を開始し、現在は国内運航のみ。西久保氏によると、海外と日本を結ぶ国際運航の実現に向けて調整を進めているといい、アジアから茨城への運航も、そう遠くない時期に実現しそうだ。

茨城は法人需要より富裕層

 マイクロジェットが運航する双発ジェット機セスナC510「サイテーション ムスタング」はパイロット2人と乗客4人が乗れる。乗客が4人から20人程度乗れる小型ジェット機は、法人利用では「ビジネスジェット」、個人向けは「プライベートジェット」と呼ばれることが多く、どちらも同じサイズの機体を指している。同社もペット同伴の旅行などの用途では「プライベートジェット」と表現しているが、運航する機体は同じムスタングだ。

ビジネスジェットが初めて乗り入れた茨城空港=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 法人利用は、空港近くの地域に拠点を置く企業が、各地の事業所を回る際に使う。例えば首都圏や関西圏の地方都市に本社がある企業が、遠隔地の事業所へ社員や荷物を運ぶ場合、羽田や伊丹などの大規模空港まで陸路で時間がかかるのであれば、近所の地方空港から移動したいだろう。しかし、航空会社も需要が見込めない地方空港は、定期便が飛んでいない都市が多かったり、定期便があっても便数が少ないなど、効率の良い移動が難しい。

 そうした課題を解決するのがビジネスジェットだ。しかし、西久保氏は「茨城は法人需要よりも、外国人の観光だと思う」と、茨城空港のビジネスジェット利用は日本を訪れる富裕層が主体になるとの見方だ。

 茨城県など茨城空港周辺の地域に本社を置く企業で、全国展開する企業は少ない。マイクロジェットのウェブサイトで、茨城空港から札幌の新千歳空港へ向かう片道運賃を検索すると、税込145万2000円だった。4人乗ると1人あたり36万3000円で、陸路では移動で丸一日つぶれてしまう分を効率良く仕事ができるなど、費用対効果がどの程度あるかで評価は変わってくるだろう。

 一方、富裕層の日本への旅行は、すでに東京や大阪といった大都市圏は行き尽くされた感があり、より日本の魅力を深く楽しみたいと考えている人が多い。こうしたニーズに応じていくことが、オーバーツーリズムの解消や地域活性化、関係人口の創出につながっていくとの見方が、航空・旅行業界で主流となっている。

 国内には97空港あるが、これまでは航空会社の特に羽田路線誘致が課題だった。ビジネスジェットは機体重量が軽いため、空港運営会社の着陸料収入の面では大きな貢献は難しい。一方、運航便数増加による空港内の雇用拡大や地域の発展など、羽田便とは違った形で地域の活性化につながりそうだ。

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