エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2024年5月26日 22:44 JST

茨城空港、ビジネスジェット初飛来 羽田発着で試乗会

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 自衛隊と民間の共用空港である茨城空港に5月25日、ビジネスジェット(BJ)が初めて乗り入れた。2023年10月から民間機の乗り入れが見直され、BJの受け入れが可能になったためで、試乗会として羽田空港から25日と26日の2日間飛来した。旺盛なインバウンド(訪日)需要を背景に、北関東や東北、北陸への観光利用などにつなげる。

羽田空港からビジネスジェットで茨城空港に到着した試乗会の参加者ら=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
片道145万円
時間の有効活用
課題は利用申請

片道145万円

 飛来したのは、航空大学校の卒業生が起業したBJチャーター会社のマイクロジェット(東京・新宿)が運航する双発ジェット機セスナC510「サイテーション ムスタング」(登録記号JA123F)。かつてスカイマーク(SKY/BC、9204)の茨城初便を担当した経験を持つ機長が操縦桿を握り、午前10時19分ごろ到着した。羽田を離陸後の飛行時間は約30分で、出発から離陸までの時間を合わせると50分ほどだった。東京駅から茨城県の県庁所在地である水戸へ鉄道で向かう場合は特急で約1時間30分かかり、自動車で同じ区間を高速道路を利用した場合は約1時間40分ほどになる。

茨城空港に到着するマイクロジェットが運航する羽田発のビジネスジェット「セスナ サイテーション ムスタング」=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 航大を2021年に卒業したマイクロジェットの高橋良社長によると、ムスタングはジェット機としては世界最小の部類に属するという。パイロット2人と乗客4人が乗れ、高度は航空会社の旅客機と同じ4万1000フィートで飛行でき、滑走路長は1200メートルあれば運航できることから、多くの地方空港へ乗り入れできる。

 航続距離は2161キロだが、事業機として運航する場合はマージンを確保する必要があるため、おおむね1000キロ程度。羽田-札幌(新千歳)間や、羽田-広島間などはノンストップで飛行でき、羽田-那覇間は宮崎で給油して運航している。マイクロジェットでは、法人向けは「ビジネスジェット」、個人向けは「プライベートジェット」と呼ぶようにしているという。

茨城空港を離陸し羽田へ向かうマイクロジェットが運航するビジネスジェット「セスナ サイテーション ムスタング」=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

茨城空港に駐機されたマイクロジェットのムスタングのコックピット=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回の試乗会は、マイクロジェットの販売代理店の1社で、小型航空機のオンデマンド移動サービスを手掛けるSKY TREK(スカイトレック、東京・赤坂)が企画。永堀敬太社長によると、SKY TREKの顧客で利用が多いのは羽田から2時間以内のフライトだといい、観光需要や経営者の移動などの利用があるという。今回はビジネスジェット自体の体験も兼ねた試乗会として企画したという。

 ムスタングを利用する場合、SKY TREKが設定している羽田-茨城間の片道運賃は145万2000円で、同社で利用が多いという羽田を起点とした神戸や松本も同額。4人乗った場合、1人あたり36万3000円になる。最大乗客数6人となるセスナのサイテーションCJ4 Gen2の場合、羽田-神戸間の片道は349万2000円(1人あたり58万2000円)になる。

時間の有効活用

 茨城空港から羽田へ向かう便に試乗した、県内の自動車販売会社社長の磯﨑拓紀さんは「東京へは電車移動が多く、地方都市へ向かう時は不便。場所によっては、移動でほぼ1日終わってしまう時がある」と、時間の有効活用の可能性を体験してみたいと、参加したという。

茨城空港に駐機されたマイクロジェットのムスタングの客室=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 羽田からは企業の経営者3人が搭乗して茨城へ到着。コンサルティング会社を経営する立川智子さんは「現代の“どこでもドア”だった。対面で話せる機内の空間が悩み事を聞いたり、移動しながら相談することにも適しているように感じた」と話していた。

 日本酒関連のベンチャー企業を経営する生駒龍史さんは、各地の酒蔵を巡る訪日客向けツアーなどに活用できそうだという。医療系コンサル会社を経営する内山武史さんは、「ロンドンあたりから来る人から見ると、羽田も成田も茨城も一緒なのでは」と、訪日客から見れば首都圏の空港として大差なく見えるのではと指摘していた。

 茨城から羽田へ向かう便は、午前11時に出発。その後も羽田-茨城間を2往復運航し、25日は計3往復6便運航した。

課題は利用申請

 試乗会の1往復目を終えたSKY TREKの永堀社長は、今後の茨城空港でのBJ運用について、「需要との兼ね合いだが、海外だと乗客用のラウンジがある。ランプへのハイヤー乗り入れの調整は必要になると思う」と話していた。

茨城空港を出発するマイクロジェットが運航する羽田行きのビジネスジェット「セスナ サイテーション ムスタング」=24年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 マイクロジェットの高橋社長は「運航日の1カ月前までの申請なのが課題。他空港では当日調整できるところもある」と、茨城空港の運用が2023年10月29日から見直され、今回が初のBJ乗り入れだったとあって、今後は他空港並みの利便性が実現することに期待を寄せていた。一方で「おみやげ屋さんもあり、地方空港では施設が充実していると思う」と話していた。

 マイクロジェットの西久保愼一会長によると、茨城空港のBJ利用は法人需要よりも訪日する富裕層の観光需要が期待できるという。東関東自動車道の茨城空港北インターチェンジが近く、栃木県の日光など北関東や東北、北陸地方への旅行に羽田や成田よりも適しているとの見方を示した。

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