6月4日に開港15周年を迎える富士山静岡空港。国内線は札幌・新千歳、出雲、福岡、熊本、鹿児島、那覇と夏ダイヤのみの札幌・丘珠の最大7路線が就航し、国際線はソウル、上海への定期便のほか、中国などからのチャーター便が乗り入れています。
15周年のキャッチコピーは「さぁ、15!」。「15」と「いこー(行こう)」を掛け言葉にしたもので、静岡空港の利用促進だけでなく、コロナ禍から脱して前へ進んでいこう! という願いが込められています。
静岡空港で働く人たちに話を聞くと、静岡県内の異業種から転職した人や、大規模空港から転職した人、東京の大学に進学して幼い頃から親しみのある空港に新卒で就職した人と、さまざまなバックボーンを持つ人たちが働いていました。ランプハンドリング(グランドハンドリング)や旅客ハンドリング、空港運用に携わるスタッフにお話を聞きました。
教官のひと言で悩み解決
静岡空港で航空機の到着から出発までの地上支援業務や、駐機中の機体サービス業務を担う鈴与グループの株式会社エスエーエス(SAS)。ランプハンドリングを担当する宮﨑諒士さんは2018年入社で、羽田空港で働いていたこともあり、「ほかの空港では分業していて、会社が分かれているところもありますが、SASではいろいろな地上支援業務ができます」と、大規模空港とは違ったやりがいを感じています。
運転が好きな宮﨑さんは、航空機をプッシュバックするトーイングカーや、貨物の搭降載で使うTT車など、GSE(地上支援車両)と呼ばれる空港のさまざまな特殊車両を日々運転できるのも楽しみだそうです。
ランプハンドリング歴11年の宮﨑さんも、初めて乗客が乗った飛行機をプッシュバックした時は「心臓がバクバクして足も震えました」と、新人時代を振り返ります。最初は飛行機に見立てた「ダミーシップ」で練習し、教官がOKを出せば実機に移行して、訓練中は教官と一緒に作業します。
こうして経験を積んでひとり立ちし、インストラクターの資格を持つ宮﨑さんは、「プッシュバックのやり方で悩んでいた時に、教官のひと言でうまくいったことがありました」と、訓練生時代の経験を後輩たちの課題解決に役立てています。
「天気がいいと、富士山がすごくきれいに見えるんですよ」という宮﨑さんは、家族で生活しやすいところも気に入っています。
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達成感がたまらない
静岡空港のチェックインカウンターで、利用者を出迎える旅客ハンドリング業務も担うSAS。2023年9月に入社した首藤春佳さんは、静岡県内のホテルで働いていた際に募集があり、「航空関係の仕事に進みたかったので挑戦しました」と、航空業界は未経験でグランドスタッフに転職しました。
ホテルも旅客ハンドリングも接客業ですが、実際に仕事をしてみると大きな違いがありました。「私が勤めていたホテルは時間を掛けて接客できるところでしたが、空港は時間が勝負です。短時間でしっかりとコミュニケーションを取って接客しています」と、前職の経験を生かしながら、空港という場の特性に合わせています。
多くの人たちが連携して、初めて飛行機を出発させられるのが空港の仕事。首藤さんは「自分の業務だけではなく、相手がどういう仕事をしているかを意識しています」と、旅慣れない乗客がチェックインした際に会話を交わして安心させたり、カウンター業務で気づいたことを客室乗務員に伝えるなど、チームが力を発揮できる仕事の進め方を大切にしていました。
乗客が困っていそうな時には、自ら声を掛けるようにしているという首藤さん。「いろいろな理由で飛行機に乗られる方がいらっしゃいます。以前、大幅な遅延があった際に、不安そうな表情の方がいました。もし欠航になった場合、どういう手続きの流れになるかなどをお伝えしたのですが、最後は不安が解消されたようでした」と、安心してもらえる接客を心掛けています。
「時間が勝負というと大変に思えますが、いろんな職種の人たちが定刻に出発できるよう作業しています。最後に出発便を定刻で送り出した際の達成感はたまらないですね」。
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小学生の時に開港
空港で働く人たちというと、カウンターに立つグランドスタッフや、保安検査場のスタッフ、飛行機に手荷物や貨物を搭載したり、機体をプッシュバックするランプハンドリングのスタッフを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。このほかにも、滑走路やスポット(駐機場)などを管理するターミナル運営会社の仕事があります。
「静岡空港が開港したのが小学生の時で、幼い頃から思い入れのある場所でした」と話すのは、空港を運営する富士山静岡空港株式会社に、新卒で2020年に入社した空港運用部 空港運用ユニットの岡村佳奈子さん。都内の大学に進んだ岡村さんは、地元の就職先を探す中で、子供の頃から身近な存在だった静岡空港を選びました。
現在の仕事は、乗り入れる航空会社にスポットを割り当てたり、空港に立ち入る際に必要な許可証の発行など、日々の空港運用にかかわるさまざな業務です。スポットの割り当ては航空会社ごとに公平に割り当てる必要があり、運用の中でも重要な業務の一つ。「流れができるとスッとできますが、夏と冬のダイヤの変わり目や月の初日は緊張します」という岡村さん。
一方で、若手であっても会社が求める水準を満たしていれば、重要な仕事も任せてもらえるやりがいも感じています。遅延など定期便のイレギュラー運航が発生した際のスポット変更などは迅速に対応する必要があり、空港内で働くさまざまな職種の人たちとの連係プレーが不可欠。岡村さんは「運航がスムーズに終わると、やりがいを感じます」と、チームワークの大切さを日々感じています。
空港会社で働く人の多くは地元在住。大学進学を機に一時地元を離れたことで、改めて良さを実感した岡村さんは、幼い頃から目にしてきた空港を安全に運用するチームのひとりになりました。
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徳川家康が終の棲家を構え、過ごしやすい気候の静岡。富士山をはじめとする観光資源を有することに加え、東京にも大阪にもアクセスしやすい立地から、コロナ前の静岡空港は中国からの訪日客でにぎわいました。「2019年度は国際線の比率が4割で、そのうちの8割が中国でした」と説明する富士山静岡空港株式会社の西村等社長は、羽田や成田のような大規模空港と異なり、ターミナルがコンパクトであることから「迷うことがなく、ストレスフリーです」とアピールします。コロナ後の現在は、県内企業も進出し、訪日需要も拡大しているベトナムにも力を入れていくそうです。
空港会社はコロナ期間中に旅行業の免許を取得し、地元企業とコラボした旅行商品を企画するなど、社員のアイデアを具現化できる環境作りも進めています。熱い地元愛を持つ方や、大都市圏とは違うゆとりある生活に興味がある方を、チームワークを大切にする仲間が待っています。
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