エアライン, 解説・コラム — 2024年4月26日 22:14 JST

JAL、機長深酔いでダラス発欠航 アルコール未検出も「乗務させるべきでない」

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 米ダラス・フォートワースを現地時間4月24日に出発予定だった日本航空(JAL/JL、9201)の羽田行きJL11便(ボーイング777-300ER型機、登録記号JA742J)に乗務予定の男性機長(49)が、乗務前の23日深夜に滞在中のホテルで酒に酔って騒ぎ、警察から口頭で注意を受けるトラブルがあった。機長は乗務5時間前と2時間前のアルコール検査で、アルコールは検出されなかったものの、JALは機長の心身状態を確認する必要があり、乗務につかせるべきではないと検査前に判断。24日のJL11便を欠航した。搭乗予定だった予約客157人のうち、大半の人はJALが手配したアメリカン航空(AAL/AA)の代替便で24日のうちに出発したという。

—記事の概要—
警察官から口頭注意
アルコール規定は抵触せず
時系列の流れ

警察官から口頭注意

機長の飲酒トラブルで24日のダラス・フォートワース発羽田行きJL11便を欠航したJAL(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機長は22日の羽田発ダラス・フォートワース行きJL12便に乗務し、22日午前8時25分に現地入り。乗員16人(機長2人、副操縦士1人、客室乗務員13人)のうち、この機長を含むパイロット3人と客室乗務員4人の計7人で、乗務2日前の22日午後6時ごろから飲食店で食事会を開き、ホテルのラウンジで2次会、機長の部屋で3次会が開かれたが、ホテルのスタッフが騒がしいとして23日午前2時ごろに部屋を訪ねて注意し、解散となった。

 3次会が終わり、参加していたパイロット2人(もう1人の機長と副操縦士)と客室乗務員2人(1次会参加者のうち2人は不参加)が部屋を出た際、この機長も廊下に出てきたところ、足もとがおぼつかない様子で声が大きくなったことからラウンジへ連れて行き、ホテルのスタッフが警察官を呼んだ。機長はその場で警察官から口頭で注意を受けた。

 参加者全体の飲酒量はワイン7本相当と、330mlの缶ビールを12本から18本を購入。このうち、飲まなかった缶ビールは廃棄したという。

 機長が乗務予定だった羽田行きJL11便は、定刻でダラスを24日午前11時5分に出発予定だった。2018年から2019年にかけて起きたパイロットの飲酒問題以降、JALはパイロットが飲酒できる時間を乗務便の出発12時間前までとしており、24日のJL11便の場合は23日の午後11時5分まで。機長が飲酒していたのは、遅くともこれより約21時間前までだった。また、会社側が遠隔で確認する乗務5時間前と、JALの施設内で対面確認する乗務2時間前の計2回のアルコール検査では、いずれもアルコールは検出されなかった。

 社内規程で定めた時刻よりも前の飲酒で、検査でもアルコールは検出されなかったが、酔って騒いだ要因として心身の状態を確認する必要があり、乗務させるべきではないと判断した。

 また、日本から別のパイロットを手配し、交代すると大幅な遅延になることから、23日午後4時ごろに24日のJL11便を欠航すると決定。振替便として、アメリカン航空のダラス発とシカゴ発を手配した。

アルコール規定は抵触せず

 JALによると、機長は国土交通省航空局(JCAB)やJALが定めるアルコール関連の規定には抵触していなかったものの、ホテルでほかの宿泊客や従業員に迷惑をかけたとして、事実関係を公表。当該便の予約客には「乗員の体調不良による乗員繰り」により欠航すると説明した。JALでは、機長が深酔いした経緯として、身体や心の状態を確認する必要があったとして「体調不良」と説明したという。

 機長は24日時点の乗務歴が21年3カ月で、機長経験は1年1カ月。飛行時間は1万368時間となっている。これまでに飲酒によるトラブルはなく、参加した乗務員からの聞き取り調査では、飲酒量が一人だけ突出していたわけではないという。機長は会社の聞き取りに対して、自分が思っていたよりも早く酔いがまわってしまったと話しているという。

 JALから報告を受けた航空局は、予約客への対応と実効性ある再発防止策を求めた。また、JALは現地の支店を通じてホテルに謝罪したという。JALは飲酒問題により、国交省から2018年12月21日と2019年10月8日の計2回、行政処分となる事業改善命令を受けている。定期便を運航する航空会社で、同じ内容の事業改善命令を1年以内に再び受けた事例は過去になかった。

 JALは26日、「運航乗務員の飲酒に起因する不適切な行動によって、このような事態を発生させてしまい、大変、重大に受け止めております。二度とこのようなことがないよう再発防止の徹底を図り、信頼回復に向けて取り組んでまいります」とコメントを発表した。

時系列の流れ(いずれも現地時間)
22日
午前8時25分 羽田発JL12便がダラス・フォートワース到着
午後6時ごろ 食事会
午後9時ごろ 宿泊ホテルへ戻りラウンジで2次会
午後11時ごろ 機長の部屋で3次会

23日
午前2時ごろ ホテルのスタッフが部屋を訪れ注意を受けて解散
午前4時ごろ 警察官によるホテルでの聞き取り終了
午前5時ごろ ホテルからJALへ連絡
午後4時ごろ 24日の羽田行きJL11便の欠航決定
午後11時5分 24日のJL11便出発12時間前

24日
午前6時5分 JL11便出発5時間前のアルコール検査(アルコール未検出)
午前9時5分 JL11便出発2時間前のアルコール検査(アルコール未検出)
午前11時5分 JL11便出発時刻(欠航)

25日
午後2時40分 JL11便到着時刻(欠航)

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