ボーイングは4月18日、名古屋駅前に日本の研究開発拠点「ボーイング ジャパン リサーチセンター」を開設した。代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」や、水素燃料電池の航空機への実装、機体の狭小部位を整備する際のロボット活用、炭素繊維複合材などの研究開発を進めるもので、現在27人いるスタッフを50人に増やす。
—記事の概要—
・研究開発とサプライヤー支援
・センター開設「重要なステップ」
研究開発とサプライヤー支援
名古屋を中核とする中京圏では、787型機や777型機の主要部品が製造されており、ボーイングは名古屋に研究開発センターを開設すると2022年8月1日に発表。これまでの2年間は、今回オープンしたオフィスの開設準備などのため暫定的な物件を借りていたが、開所式が開かれた18日から本格稼働となった。
日本で研究する分野は「航空機の設計や製造に取り入れるための最新デジタルツール」「複合材」「SAF」「水素技術統合プロジェクト」「ロボティックス」の5分野。軽量複合材の生産能力増強や複合材のリサイクル、水素燃料電池の航空機への搭載、機体の狭い場所を整備する際のロボット活用などを研究し、オフィスには3Dプリンターなども設置した。
研究開発のほか、これまでは米国本社が行ってきた日本のサプライヤー支援も担う。製造技術のインテグレーションや、工程作り込みの準備、サプライヤーが要因となる製造時のリスク抑制などで、将来的には東南アジアのサプライヤーも名古屋で支援できる体制を目指す。
ボーイングの研究開発拠点は米国内に5カ所、海外は日本のほか、欧州、豪州、ブラジル、中国、インド、韓国の7カ所にある。
センター開設「重要なステップ」
来日したボーイングのチーフテクノロジーオフィサー、トッド・シトロン氏は「愛知県や中部圏でのプレゼンスを高めたい。センター開設は重要なステップであり、深い連携が可能になる」と述べた。27人いるスタッフのうち、およそ半数は2022年8月のセンター開設発表後に採用した人たちで、SAFの専門家2人も加わったという。
また、新型コロナの影響期間に定着したオンライン会議ではなく、対面での研究開発を強化する意義について、シトロン氏は「人と人とのつながりは非常に大切で、これはコロナ後に旅客が増加していることからも見て取れる。研究開発は、特に我々が求めるレベルでは対面が重要で、コラボレーションがカギになる。私も日本へ頻繁に来られるようになり、非常にうれしい」と、フェース・トゥ・フェースを重要視していく姿勢を示した。
開所式に来賓として招かれた愛知県の大村秀章知事は「自動車産業に次ぐ大きな産業に育てたい」とあいさつ。センターと連携し、航空産業の育成を支援していくという。
経済産業省の呉村益生・航空機武器宇宙産業課長は「航空機産業は高い技術力と品質を持つ我が国にとって、非常に重要な産業。近年、経済安全保障や防衛力の強化が喫緊の課題となる中、特に民生・防衛共通の産業基盤としての重要性も高まっている」と指摘した。
「我が国の航空機産業が持続的に発展していくためには、ボーイングと築き上げてきたサプライヤーとしての立場に満足せず、付加価値を提供していく存在へと、自らを変革していく必要がある。日本の技術やものづくり基盤は、グローバルに飛行機を作っていく上で極めて重要であり、不可欠な存在だと考えている。日米協力、未来への挑戦をしっかり支えていきたい」(呉村課長)と述べた。
ボーイングは、2019年に経産省と航空機の技術協力で合意。2022年8月1日にセンター開設を発表した際には、SAFと電気・水素パワートレイン技術、気候への影響ゼロの航空を促進する将来の飛行コンセプトに焦点を当てることで新たに合意した。
また、国産SAFの商用化などを目指す日揮や全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)などが設立した有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」への参画も表明している。
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ボーイング・ジャパン
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