ヤマトホールディングス(9064)と日本航空(JAL/JL、9201)、JALグループのLCC、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)は4月11日、エアバスA321ceo P2F型貨物機を就航させた。初便の成田発那覇行きIJ451便(A321P2F、登録記号JA81YA)は、通常の宅配便のほかEコマース系の荷物などの貨物20トン弱を載せて午前5時56分に出発した。
A321P2Fは、中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修したもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載でき、東京を起点にすると台湾や香港まで飛行できるという。ヤマトHDは3機リース導入する計画を進めている。
4月1日に施行されたトラックドライバーの時間外労働の上限規制など、輸送力減少が懸念される中、首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完し、全3機で1日21便を計画している。
就航当初は、成田-札幌線を1日2往復4便(IJ403/406、IJ405/408)、成田-北九州線を1日3便(成田発IJ425、北九州発IJ422と426)、成田発那覇行きを1日1便(IJ451)、那覇発北九州行きを1日1便(IJ456)運航。夏ごろをめどに、羽田空港を深夜早朝に発着する札幌線と北九州線の運航を始める。
ヤマトが貨物機を導入するのは初めてで、国内の航空会社がA321P2Fを運航するのも初となり、LCCが貨物機を運航するのも初の取り組みになる。
各社の役割分担は、ヤマトHD傘下のヤマト運輸が配送拠点と空港間の陸上輸送や、空港の貨物上屋での積み付けを担当。JALが空港の貨物上屋内での貨物計量やランプハンドリング、機体の整備を担い、スプリング・ジャパンが運航とオペレーションコントロール、ロードコントロールを担当する。スプリングのパイロットはボーイング737-800型機を操縦しているが、一部の人はA320のライセンスも保持している。
ヤマトHDの長尾裕社長は今回の貨物機について、コロナ前の2019年から本格的に検討を開始したとした上で、「予定通り就航し、計画に間に合った。物流業界は(物流の輸送能力が不足する)2024年問題が始まったタイミング。持続可能な物流を提供し、新たなモードに入った」と述べた。
JALの赤坂祐二会長は「ヤマトから相談受けたのが2020年。当時はコロナで旅客需要が蒸発し、どん底だった」と振り返った。A321P2Fは、10トントラックで5-6台分に相当する最大積載量(ペイロード)があることから「日本全国をカバーできる。宅急便に使うには最適だ」と評価した。
運航を担うスプリング・ジャパンは、今年8月で就航10周年を迎える。4月に就任した同社の浅見達朗社長は「日本でLCCが貨物専用機を運航するのは初めて。10年間で培った安全運航のノウハウで、物流に新しい価値を提供したい」と抱負を述べた。
また、JALは自社の中型旅客機ボーイング767-300ER型機を改修した貨物専用機も3機導入。2月19日から順次就航させている。最大搭載重量はA321P2Fの2倍近い約50トンで、独DHLエクスプレスと協業し、成田と中部を起点に台北(桃園)、ソウル(仁川)、上海(浦東)の東アジア3都市へ乗り入れ、将来的には国内線も飛ぶことで稼働率を高める。
*写真は13枚。
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