2029年就航を目指す超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は現地時間3月22日、超音速飛行の技術実証機「XB-1」(登録記号N990XB)が初飛行に成功したと発表した。オーバーチュアを開発する基礎となるもので、カリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で行われ、高度7120フィート(約2170メートル)を最高速度238ノット(約440キロ)で飛行した。
—記事の概要—
・四半世紀ぶり超音速機復活へ
・JALも出資
四半世紀ぶり超音速機復活へ
XB-1は2人乗りで、主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2(時速換算2335キロ)の実現を目指す。2020年10月8日にロールアウト(完成披露)し、当初は2021年にも初飛行を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの影響で計画が後ろ倒しになっていた。
今回の初飛行には、ノースロップ・グラマンT-38「タロン」がチェイス機として同行。XB-1の飛行状態や着陸の様子などの初期評価が行われた。
モハベは退役して部品取りとなった機体や長期保管の機体が数多く駐機され、「飛行機の墓場」と呼ばれる空港の一つだが、ベルX-1やノースアメリカンX-15、ロッキードSR-71「ブラックバード」など、多くの歴史的な初飛行が行われた場所でもある。
ブームは、XB-1で超音速飛行の技術を検証し、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。英仏が共同開発した「コンコルド」は2003年11月26日のフライトを最後に退役しており、オーバーチュアが計画通りに就航すると、四半世紀ぶりの超音速機による旅客便の復活となる。
JALも出資
オーバーチュアは、2025年のロールアウト(完成披露)を計画しており、2026年の初飛行を経て2029年の就航を予定。初の確定発注は、ユナイテッド航空(UAL/UA)から2021年6月3日に15機を獲得し、アメリカン航空(AAL/AA)も最大20機の発注で、追加40機分のオプション付きの契約を結んでいる。
また、日本航空(JAL/JL、9201)が2017年12月にブームと提携して1000万ドル(当時の円換算で約11億2500万円)を出資し、将来の優先発注権を20機分確保している。
現在の仕様は、巡航速度が洋上で超音速のマッハ1.7、陸上で亜音速機のマッハ0.94、ペイロード航続距離は4250海里(7871キロ)を計画。エンジンは4基で、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。
乗客定員は65から80人で全席ビジネスクラス、外寸は全長201フィート(約61メートル)、翼幅106フィート(約32メートル)、全高:36フィート(約11メートル)、内寸は全長79フィート(約24メートル)、通路の最大高さ6.5フィート(約2メートル)、2つのLRU(列線交換ユニット)、4系統のデジタルフライバイワイヤ、エンジンは100%SAF(持続可能な航空燃料)対応、騒音レベルはICAO(国際民間航空機関)のチャプター14、FAA(米国連邦航空局)のステージ5としている。
民間機のほか、ブームは米国の航空宇宙・防衛大手ノースロップ・グラマンと提携し、防衛分野でオーバーチュアを活用する研究も進めている。
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