関西3空港を運営する関西エアポート(KAP)は、新たなバードストライク対策として、人体に影響のない高周波を発する鳥類防除装置「バードソニック(旧称・鳥ソニック)」の試験運用を関西・伊丹・神戸の3空港で3月1日から始めた。約1年間検証する。
バードソニックは、自動車用品などを手掛けるT.M.WORKS(山梨・南都留郡)が開発。シカなどの野生動物が道路で自動車にひかれて亡くなる交通事故「ロードキル」を防ごうと開発された「鹿ソニック」を基に、鳥類が嫌がる10-30キロヘルツの高周波を発生させ、鳥を傷つけることなく回避行動を促す。
電源はソーラーパネルで、1基あたり4台から8台のスピーカーを設置。空港では滑走路方向にスピーカーを向け、1台ずつ向きを少しずつ変えて千鳥やヒバリ、猛禽(もうきん)類などが滑走路に近づかないようにする。
鹿ソニックとバードソニックは、ロードキル対策を研究してきた岡山理科大学基盤教育センターの辻維周(つじ・まさちか)教授が実験や検証などに協力。バードソニックが初めて空港に設置されたのは島根県の萩・石見空港で、2023年3月から検証しており、カラスなど滑走路に近づく鳥を追い払う効果が確認された。6月には鹿児島県の喜界空港と屋久島空港にも設置され、千鳥などが寄りつかなくなったという。
関西空港では、A滑走路(RWY06R/24L)の中央付近の海側にバードソニックを2基、100メートルほど離して設置。伊丹と神戸も2基設置し、スピーカーの角度などを調整して効果を検証していく。
KAPによると、今回の設置場所はバードストライクが多い地点ではなく、航空機の動きがあり、効果を検証しやすい所を選んだ。辻教授によると、3500メートルある関空のA滑走路の場合、最低10基程度はあった方が、航空機の地上走行や離着陸時に効果が期待できるという。
高周波の照射距離は150メートルから200メートル、追い風で300メートル。人体に影響はなく、周波数や照射パターンを変えることで鳥類の「音慣れ」を防ぐようにしている。辻教授によると、他空港や農場などで人への影響は確認されておらず、先行論文でも影響がないことが確認されているという。
実証実験期間中の稼働時間は、伊丹と神戸が午前5時から午後11時30分まで、運用時間が24時間の関空は午前4時から午後11時30分まで。KAPでは、バードストライクが航空機の損傷や欠航、遅延などにつながることから、鹿ソニックや他空港で効果が確認されているバードソニックの実証実験を実施することで、発生頻度の低減を目指す。
*写真は9枚。
関連リンク
鹿ソニック(T.M.WORKS)
岡山理科大学
辻 維周(岡山理科大学)
関西国際空港
大阪国際空港
神戸空港
・関西3空港、高周波「バードソニック」でバードストライク対策 関空・伊丹・神戸で3月から検証(24年2月24日)
・萩・石見空港、高周波「鳥ソニック」でバードストライク対策検証(23年4月6日)