全日本空輸(ANA/NH)とEC(電子商取引)自動出荷システムを手がけるロジレス(品川区)は2月27日、従来は難しかった関東から九州全域への翌日配送を実現する物流システムの実証実験を報道関係者に公開した。トラックドライバーが不足する「2024年問題」に対する取り組みの一環で、4月から本格稼働する。これまで貨物の搭載量が少なかった昼間の国内線を活用することで、競争力のある低価格運賃の提供を目指す。
—記事の概要—
・昼間の空きスペース活用
・今秋にAPI公開
昼間の空きスペース活用
今回の取り組みで、関東地区発の貨物を岡山以西の中国・四国地方、離島を除く九州全域へ翌日配送できるようになる。2024年問題により、宅配便などで翌日配送できるエリアが狭くなりつつあることから、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用で翌日配送を可能にする。
ANAによると、国内線の貨物輸送は早朝の各路線初便と夜間の最終便に集中。既存の輸送力を生かし切れてないとして、昼間の便を活用するサービスを立ち上げた。旅客機の床下には貨物室があるが、ANAの国内線定期便の貨物重量利用率(積載率)は約20%にとどまり、午前10時から午後5時までの昼間帯に出発する便を中心とした残り80%の空きスペースの活用が課題だった。
現在ANAは国内線で年間25万トンの貨物を運んでおり、今回の取り組みで空きスペース約100トン分を活用すると、年間で最大約125トン分を運べるようになる。ANAによると、羽田と札幌(新千歳)・伊丹・福岡を結ぶ国内主要3幹線でも、平日のコンテナ搭載率は3割にとどまり、コンテナ搭載に余力があるこれらの路線の空きスペースを活用すると、1日あたり10トントラック140台分の輸送力があるという。
今秋にAPI公開
貨物事業者だけでなく、個人もANAグループの貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)が運営する国内貨物ポータルサイトから予約可能にした。ANAカーゴで国内貨物を担当する末原聖常務によると、今秋にはAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開し、今回のシステムを利用したい企業などが接続できるようになるという。
ロジレスのシステムを活用することで、EC事業者や倉庫事業者は1つのコンテナに複数社の積荷を混載できるようになり、積載率が高まることでコスト削減効果が期待できるという。
実証実験は羽田-岡山線で実施し、4月1日からサービスを同路線で始める。APIを公開する今秋をめどに、取引先や対象路線の順次拡大を目指す。岡山を選んだ理由について、末原常務は「顧客や陸送業者の準備も必要なので岡山を選んだ」という。
27日の実証実験は、羽田午後0時5分発岡山行きNH655便(エアバスA320neo、登録記号JA213A)で実施。出発5時間前の午前7時までに発注されたEC商品を、午前8時に倉庫で梱包完了。午前8時30分に倉庫からNH655便に積む貨物コンテナを載せたトラックが出発し、午前10時30分に羽田空港内にあるANAの貨物上屋へ到着してトラックから貨物コンテナを降ろし、出発30分前に上屋からNH655便が駐機されたスポット(駐機場)へ運んだ。
両社によると、最終的にはANA便の貨物空きスペースをロジレスのシステム上で管理できるようになり、航空機の貨物室へ搭載するまでのリードタイムを最大4時間短縮できるという。
ANAの貨物
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ANAと岡山
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