ピーチ・アビエーション(APJ/MM)は1月29日、パイロット訓練生7人に副操縦士を発令した。このうち4人は自社で初めて養成した訓練生で、関西空港内にある本社で多数の社員から祝福を受け、夢だったパイロットへの道を歩み出した。
—記事の概要—
・18年8月にプログラム開始
・本部長「プロはお客さまのために乗る」
18年8月にプログラム開始
同社は6年前の2018年8月に、パイロット育成プログラム「Peachパイロットチャレンジ制度 with AIRBUS」をスタート。同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)のノウハウを生かしたプログラムで、エアバスと三井住友銀行(SMBC)が支援している。
訓練は前半と後半の2部構成で、合わせて2年6カ月程度かかる。ピーチ入社後に始める前半訓練はニュージーランドやアイルランドを始めとした海外で進め、EASA(欧州航空安全庁)のライセンスを取得。その後国内で後半訓練に入り、国土交通省航空局(JCAB)ライセンス取得試験に合格後にすべての訓練を修了する。修了後は1年6カ月程度の副操縦士昇格プログラムへ移行。地上業務研修や路線訓練などを経て、副操縦士に必要な技量・知識があるかを確認する「任用審査」に合格後、副操縦士へ昇格する。
前半訓練の費用は自己負担だが、生活費などを支援するため「チャレンジ手当」約550万円を支給。SMBCが海外でのライセンス取得費用の支払いに利用できるサポートローンを用意した。
後半訓練は、前半訓練を終えてピーチの採用試験に合格し、同社に入社した自社養成訓練生が対象となり、訓練費用は、ピーチが全額負担する。訓練費用は、2022年度実績で9万2000ポンド(約1460万円)かかる。
ピーチはこれまで、航空大学校や私立大学のパイロット養成課程を卒業し、他社でライセンスを取得した人を採用して、副操縦士を社内で養成してきた。同制度は新卒と既卒が対象で、パイロットを希望する人々にチャレンジする機会を設ける。同社はアジアNo.1のLCCの座を目指しており、路線網拡大に不可欠なパイロットを自社養成することで、パイロット不足に対応していく。
本部長「プロはお客さまのために乗る」
副操縦士に昇格した自社養成の4人は、東京出身で製薬会社のMR(営業担当)だった羽生幸平さん(32)、神奈川出身でIT企業のシステムエンジニアだった山辺駿介さん(33)、栃木出身で中高一貫校の教員だった須藤駿介さん(33)、大学卒業後に新卒で訓練生となった神奈川出身の松永大輝さん(28)。自社養成の4人を含む7人はピーチ運航本部の田中佳功本部長から辞令を受け、パイロットが着用する「ウイングバッジ」を受け取った。
田中本部長はプロのパイロットとしてのスタートラインに立った7人に、「今まで皆さんは訓練生として。自分自身のために乗ってきた。プロのパイロットは自分のためではなく、お客さまのために乗る」と訓示。「安全に飛ぶのは絶対。お客さまが何を望んでいるのか、考えながら乗ってほしい」と語りかけた。
自社養成の同プログラムの1期生として2019年4月1日に入社した4人は、ニュージーランドで前半訓練を受けた。訓練中は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行などにより予定通りに行かないこともあったが、同期の4人で支え合いながら進めたという。
2年後の2021年6月1日からは国内での後半訓練に移り、委託先の本田航空での訓練をスタート。9カ月後の2022年3月2日に訓練修了後、ピーチの副操縦士プログラムへ移行し、昇格を目指した。
4人の副操縦士デビューは2月上旬でいずれも関空発便に乗務する。羽生さんは2日に那覇行き、松永さんは3日の福岡行き、須藤さんは4日の那覇行き、山辺さんは5日の那覇行きが初乗務となる。
同プログラムは現在、4期生までが入社し、訓練を重ねている。4月には5期生の入社も予定しているという。
関連リンク
パイロットチャレンジ制度(Peach Aviation)
ピーチ・アビエーション
ピーチのパイロット育成プログラム
・ピーチ新卒採用、自社養成パイロット3年ぶり 総合職は4年ぶり(23年3月1日)
・ピーチ、自社養成パイロット1期生の訓練修了 副操縦士への昇格目指す(22年3月3日)
・ピーチ、自社養成パイロット1期生が入社 国交省ライセンスに書き換えへ(21年6月1日)
・ピーチ、パイロット育成3期生募集 21年4月訓練スタート(20年2月28日)
・ピーチ、パイロット育成制度の2期生募集 20年4月から訓練(19年4月24日)
・ピーチ、パイロット育成制度の説明会開催(18年8月24日)
・ピーチ、パイロット育成制度の募集開始 19年4月から訓練(18年8月8日)
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