NASA(米国航空宇宙局)とロッキード・マーチンは、静粛超音速実証機X-59をこのほど公開した。陸上での超音速飛行が1973年から禁止されている中、FAA(米国連邦航空局)が許容可能な騒音基準の実現を目指すNASAの「Quesst」ミッションの目玉となるもので、今年後半の初飛行を目指す。
X-59は、ロッキード・マーチンのスカンクワークスがNASAとともに開発。スカンクワークスは、合併前のロッキード時代に開発したステルス攻撃機F-117「ナイトホーク」など特殊な機体を数多くを手掛け、X-59は米カリフォルニア州パームデールで現地時間1月12日にロールアウトした。「ドン、ドーン」と打ち上げ花火や落雷のような音を伴う衝撃波「ソニックブーム」を抑え、陸上での商用超音速飛行の実現を目指す。
X-59は音速の1.4倍、時速925マイル(約1489キロ)での飛行を目指す。大きさは全長99.7フィート(約30.4メートル)、全幅29.5フィート(約9.0メートル)で、先細りした機首は全長のほぼ3分の1を占め、通常超音速機がソニックブームを引き起こす衝撃波を緩和する。また、Quesstのチームはエンジンを上部に搭載した機体を設計し、衝撃波が機体後方に合流してソニックブームを引き起こさないようにした。
この形状から、コックピットは機体の長さのほぼ半分に位置し、前方を向いた窓はなく、コックピットに設置された4KモニターにQuesstチームが開発した高解像度カメラ「eXternal Vision Syste」が捉えた映像を流す。
今後は統合システムテスト、エンジン始動、地上走行の各試験を実施。初飛行後はいくつかの飛行試験を実施後、カリフォルニア州エドワーズにあるNASAのアームストロング飛行研究センターに拠点を移し、静粛超音速飛行の実現を目指す。NASAによる飛行試験後は、NASAがX-59を米国内の数都市の上空で飛行させ、X-59が発生させる音と人々がこれをどのように感じるかの意見を集め、FAAや国際規制当局に提供する。
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Lockheed Martin
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