国土交通省は1月9日、羽田空港で2日に発生した海上保安庁機と日本航空(JAL/JL、9201)機の衝突事故を受け、「航空の安全・安心確保に向けた緊急対策」をとりまとめたと発表した。
対策は、1)管制機関及び航空事業者等への基本動作の徹底指示、2)管制官による監視体制の強化、3)パイロットによる外部監視の徹底、視覚支援、4)滑走路進入に関するルールの徹底、5)関係者間のコミュニケーションの強化の5点を柱とした。
このうち「管制官による監視体制の強化」については、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員の配置を羽田では6日から実施し、レーダーが設置されている成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の6空港は順次実施を予定している。
「パイロットによる外部監視の徹底、視覚支援」は、航空事業者などへの滑走路進入時及び着陸進入時の外部監視の徹底指示を8日に実施し、滑走路進入手前の停止位置標識の高輝度塗色を羽田C滑走路は6日に実施済み、残り3本の滑走路(A・B・D)と新千歳・成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の各空港は順次実施を予定している。
「滑走路進入に関するルールの徹底」は、滑走路進入に関する管制用語のパイロットへの周知徹底を8日に実施。滑走路進入は「Cleared for take-off(離陸支障ありません)」「Cross runway(滑走路横断支障ありません)」「Line up and wait(滑走路に入って待機してください)」「Taxi via runway(滑走路を地上走行してください)」「Backtrack runway(滑走路を離着陸方向と反対に地上走行してください)」のみとした。これらの許可や指示を受けた場合は確実に復唱するとし、内容に疑義が生じた場合は管制官に確認するよう周知した。
滑走路進入に関する管制指示の更なる明確化として、航空機の離陸順序を示す「No.1」「No.2」などの情報提供を当面停止する。また、滑走路周辺の走行に関する要注意事項の航空事業者等への周知徹底を羽田は月内に実施予定で、新千歳・成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の各空港は順次実施を予定している。
「関係者間のコミュニケーションの強化」は、管制官とパイロットの交信に関する緊急会議を羽田は月内に実施予定。管制官による管制指示・許可の言い間違いや、パイロットによる聞き間違いにより発生するリスクの低減を図るもので、誤解を招きやすい用語や改善点などを検討する。新千歳・成田・中部・伊丹・関西・福岡・那覇の各空港も順次実施を予定している。
事故は2日午後5時47分ごろ、海保機MA722(ボンバルディアDHC-8-Q300、登録記号JA722A)とJALのエアバスA350-900型機(札幌発羽田行きJL516便、JA13XJ)がC滑走路で衝突し炎上。海保機は乗員6人のうち機長を除く5人が亡くなった。
JL516便は乗客367人(幼児8人含む)と乗員12人(パイロット3人、客室乗務員9人)の計379人が搭乗していたが、全員が3カ所の出口から緊急脱出した。左右4カ所ずつ計8カ所あるドアのうち、前方2カ所(L1・R1)、後方1カ所(L4)を使って脱出した。残り5カ所は炎が見えるなどの理由で、客室乗務員が使用不可と判断した。乗客のうち2人が打撲などのけが、体調不良により病院で診察を受けた乗客が13人となった。
再開したC滑走路を離着するJALのA350
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8日午前0時再開
・羽田C滑走路、再開初便はANAニューヨーク行きNH160便 着陸はJAL那覇発JL922便(24年1月8日)
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撤去作業
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事故でJAL A350全損
・JAL、A350全損で150億円損失 業績影響は精査中(24年1月4日)
・羽田JL516便、乗客1人打撲 3カ所から379人全員脱出、原因調査中(24年1月3日)
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・JAL A350が羽田で炎上 札幌発JL516便、乗客乗員は全員脱出(24年1月2日)