全日本空輸(ANA/NH)は12月25日、羽田-八丈島線で代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ、持続可能な航空燃料)」を活用した運航を始めた。東京都による助成事業で、2024年5月までを予定。国内線定期便でSAFを継続的に使用するのは日本初となり、1日3往復全6便に使う。
羽田-八丈島線は小型機のボーイング737-800型機(2クラス166席)で運航。燃料消費量は通常のジェット燃料で1往復あたり約8キロリットル、CO2(二酸化炭素)排出量は約80トン。事業期間の約5カ月間で、SAFの原液「ニートSAF」を約100キロリットル使用し、CO2排出量を約400トン削減できる見通し。SAFは既存のジェット燃料と同じ給油設備などを利用できるが、対象便に対して個別に給油するのではなく、帳簿上でCO2排出量を削減したものとして扱っていく。
都の助成は最大6000万円。羽田-八丈島線で使う燃料のうち、25日から年内は約10%、年明けからは約1%にあたる量のSAFを使用する。航空需要の増加が見込まれる「フリージア祭」が開かれる春休みとゴールデンウィークは、1週間ずつSAFの割合を10%に増やす。また、利用者にSAFの存在を知ってもらう情報発信なども検討しており、認知度向上につなげる。
ANAは2020年11月6日に、日本の航空会社では初めて日本出発の定期便にSAFを使用。2022年11月14日には、ANAの国内線定期便で初めてSAFを使った。今回は都が公募した「バイオ燃料活用における事業化促進事業」で、ANAが提案した羽田-八丈島線でのCO2排出量削減事業が採択された。ANAによると、都の助成を受けることから、都内の生活路線である八丈島線を選んで応募したという。
ANAの井上慎一社長は「こうしたご支援がないと、なかなか個社だけでは対応できない。SAFは価格が高いが、大事なキーとなる燃料だ」と述べ、航空業界が2050年までに実現を目指すCO2排出実質ゼロを実現する上で、SAFの普及が不可欠であるとの認識を示した。
今回使用するSAFは、フィンランドのネステ社が製造したものを代理店の伊藤忠商事(8001)が輸入。SAFは廃食油や、サトウキビなどのバイオマス燃料、都市ゴミ、廃プラスチックを使って生産するもので、ANAによると今回使うSAFはラードなど動物油脂が原料になるという。
25日は東京都の小池百合子都知事が羽田空港を訪れ、SAFの給油状況を視察。小池知事は「廃食油をどうやって確保していくのかなど、課題と解決策を進めながら、より持続可能なサプライチェーンを作っていくことが必要だと思う」と感想を述べた。
SAFは国内生産に向けた研究が進められており、ANAは日本航空(JAL/JL、9201)や日揮ホールディングス(1963)などとSAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を2022年3月2日に設立。国産SAFは、2025年度にも利用できるようになる見込み。
ANAのSAF
・ANA、国内混合SAFを初調達 伊藤忠から、羽田・成田で活用(23年4月4日)
・ANA、米ベンチャーからSAF調達 伊藤忠と合意、25年以降導入(23年1月17日)
・ANA、グリーンジェット2号機就航 SAFを国内線定期便で初使用(22年11月14日)
・ANA、企業参加型CO2削減プログラム始動 代替燃料「SAF」で排出量減(21年10月14日)
・ANA、バイオ燃料で定期便運航開始 CO2を9割削減(20年11月6日)
2012年の取り組み
・「まだ実験レベル」のバイオ燃料、その現状は? ANA担当者に聞く(12年6月18日)
・全日空、世界初の787にバイオ燃料を搭載したデリバリーフライト実施(12年4月18日)
JOINと協力覚書
・ANAとJAL、支援機構と海外SAF製造・調達(22年12月20日)
「ACT FOR SKY」設立で国産SAF実用化へ
・ANAやJALら、国産SAF実用化へ「ACT FOR SKY」設立 3月2日は「サフの日」代替燃料で脱炭素社会へ(22年3月2日)
ANAとJALで共同レポート
・ANAとJAL、代替燃料「SAF」普及へ共同レポート策定 2050年CO2排出実質ゼロへ(21年10月8日)