空港施設(8864)は12月4日、水素が燃料となる「燃料電池フォークリフト(FCFL)」のトライアル利用を始めた。羽田空港の国内航空貨物ターミナルで、日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)の貨物部門が2024年1月31日まで利用する。バッテリーの充電に時間がかかる電動フォークリフトと比べ、約3分間で水素を充てんできる点や、CO2(二酸化炭素)を排出せず無臭である点などを実際の運用環境で検証していく。
—記事の概要—
・再生可能エネルギーで水素製造視野
・貨物上屋でトライアル利用
再生可能エネルギーで水素製造視野
FCFLのトライアル利用は、空港施設が東京都の「燃料電池フォークリフトマッチング導入支援事業」のトライアル事業者に採択されたことで実施。空港施設によると、FCFLのCO2排出量はガソリン車と比べて約52%、ディーゼル車との比較で約38%、電動車と比べて約16%低減できるという。
また、ガソリン車やディーゼル車が3分ほどで給油が終わるのに対し、電動車はバッテリーの充電完了までに8時間程度、急速充電でも約1時間30分かかるが、水素は化石燃料と同じ3分程度で充てんが終わるため、車両の稼働率を高められる点も、24時間運用の羽田空港には適していると判断した。
空港施設の田村滋朗社長は「かつてFCFLの実装実験に携わった時に、においがないことが屋内での作業環境改善にも寄与すると感じた。コストが課題だが、将来的には再生可能エネルギーで水素を作りたい」と述べ、同社が羽田空港で展開している太陽光発電などを組み合わせ、CO2を排出せずに水素を製造できるようにしていきたいという。
羽田空港内での実用化の時期は「今の段階で何年という段階ではない」としつつも、航空業界が掲げる2050年のCO2排出量実質ゼロを実現していく上で、2030年ごろまでには実用化が必要との考えを示した。空港施設では、FCFLや水素充填設備などを航空会社などに貸し出すビジネスモデルを検討している。
貨物上屋でトライアル利用
空港施設は、自社で管理運営する羽田空港国内航空貨物ターミナル地区に、FCFLの導入を検討。2022年6月には、貨物上屋を使用しているJALとANAのグランドハンドリング(グラハン、地上支援)や、フォワーダー(利用運送事業者)の担当者らが参加する試乗会を開いた。
今回のトライアル利用では、JALの貨物事業部門JAL CARGO(JALカーゴ)と、ANAグループの貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)が、貨物上屋でFCFLを運用していく。
JALカーゴのスタッフによると、同社は10年ほど前から電動フォークリフトを導入しており、FCFLの売りでもある低騒音で排気ガスが出ない環境には慣れてしまったという。一方、バッテリーが非常に重いため人の力だけでは交換できず、交換時はもう1台フォークリフトが必要になるなどの課題があり、短時間で水素を充てんできるFCFLに期待を寄せる。
実際にFCFLを運転したスタッフは、「電動フォークリフトと比べると、足もとの振動が気になったが操作には影響なく、慣れの問題だと思う」と話し、荷物の上げ下げや加速感は電動フォークリフトに近いという。
JALカーゴでは、羽田空港の国内線貨物部門が使うフォークリフトはすべて電動化済みで、12台が稼働。このほかに郵便を扱う部門は交換用バッテリーを置くスペースがないことや、停電リスクを考えて4台のディーゼル車を使用している。
空港施設では、期間中にFCFLの通常業務での機能性や操作性を検証。トライアル利用終了からおおむね1カ月後をめどに、航空会社からの聞き取りした内容などを踏まえ、検証結果をまとめたいという。
*写真は15枚。
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空港施設
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