エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2023年11月18日 16:52 JST

JAC、衛星使う新着陸方式「LPV」開始 悪天候時の離島就航率向上に期待

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 日本航空(JAL/JL、9201)グループの日本エアコミューター(JAC/JC)は、衛星を活用して空港の滑走路へ進入する新方式「LPV」の運用を11月10日から始めた。従来よりも低い高度まで降下して着陸可否を判断できるため、悪天候による視界不良時に就航率の向上や安全運航につながるという。

JACのLPV進入可能空港(左)と屋久島の事例(同社資料から)

JACのATR42=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 LPV(Localizer Performance with Vertical guidance)進入方式は、衛星を使うもので、JACの就航空港のうち福岡、種子島、屋久島の3空港が今回の対象。GPS(全地球測位システム)信号に加え、GPS信号の誤差や異常を地上で監視し、誤差補正情報や異常情報を衛星から航空機へ送信するシステム「SBAS(エスバス:衛星航法補強システム)」から送られる位置補正データを活用し、航空機が着陸時に進入方向と降下角度のガイダンスを受けながら滑走路へ進入する。

 このため、離島などILS(計器着陸装置)の整備が難しい空港でも悪天候時の就航率向上が期待できるという。3空港はいずれも滑走路が現在1本で、ILSは福岡がRWY16/34ともにあり、種子島はRWY31側のみあり、屋久島はなしとなっている。

 JACによると、屋久島のRWY32運用では、これまで視界不良時は対地高度1066フィート(約325メートル)までしか進入できなかったが、LPVでは338フィート(約103メートル)まで進入できるようになり、従来より低い高度で着陸の可否を判断できる。

 海外では米国などで実用化され、国内ではJALグループの北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)が初めて導入し、2022年9月8日から運用を始めている(関連記事)。

 国土交通省航空局(JCAB)によると、LPVは一つのシステムで日本全国をカバーでき、気温の影響を受けないため、高気温、低気温時も降下パスが一定であるなどのメリットがあるという。運用ルールの設定は2022年6月から始まり、LPV進入が可能な航空機が就航していて、導入効果の高い空港から進めている。

 2025年以降はSBASの配信サービスを提供する準天頂衛星「みちびき」の運用機数が増えることで、「LPV200」と呼ばれる200フィートまで進入できるモードの実用化が見込まれており、ILSの「CAT I(カテゴリーI)」相当の運用が可能になるという。

 JACとHACは、いずれも仏ATR製ターボプロップ機を導入しており、JACはATR42-600型機(1クラス48席)が9機とATR72-600(同70席)が2機の計11機、HACはATR42-600(同48席)を4機運航している。両社とも、衛星の打ち上げ状況などに合わせて、対象空港の拡大も検討していく。

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