官公庁, 機体 — 2023年9月16日 12:48 JST

米ブーム、防衛向け超音速機の諮問委員会 アフターバーナーなし4発機

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 2029年就航を目指す超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は、軍事・防衛の専門家による防衛諮問委員会をこのほど発足させた。米国政府と同盟国を対象にした防衛分野向けオーバーチュアの開発を進める。

ブームが開発中の超音速機オーバーチュアの最新イメージイラスト(同社提供)

 同グループは米軍の退役大将らで構成する独立評議会で、機動作戦や要人輸送、防衛コミュニティ内の研究開発などに精通した7人が創設メンバーに選ばれた。

 ブームは、米空軍と将来の大統領専用機をはじめとした要人輸送機を視野に、将来空軍が運用する機体に応用される技術革新への資金援助を目的としたプログラムの契約を2020年9月に締結。2022年7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでは、米国の航空宇宙・防衛大手ノースロップ・グラマンとの提携も発表された。

 ブームの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるブレイク・ショール氏は、防衛分野でのオーバーチュアの活用について、「基本的に平和的な用途だと考えている」と述べた。防衛や軍事への応用は、部隊の輸送、特殊任務や偵察、負傷兵の戦場からの離脱、救命医療など、さまざまな用途を検討しているという。

米空軍のロゴを描いたブームが開発中の超音速機オーバーチュアの最新イメージイラスト(同社提供)

 オーバーチュアは、2025年にロールアウト(完成披露)し、2026年の初飛行を経て2029年の就航を予定。初の確定発注は、ユナイテッド航空(UAL/UA)から2021年6月3日に15機を獲得し、アメリカン航空(AAL/AA)も最大20機の発注で、追加40機分のオプション付きの契約を結んでいる。

 また、日本航空(JAL/JL、9201)が2017年12月にブームと提携して1000万ドル(当時の円換算で約11億2500万円)を出資し、将来の優先発注権を20機分確保している。

 現在の仕様は、巡航速度が洋上で超音速のマッハ1.7、陸上で亜音速機のマッハ0.94、ペイロード航続距離は4250海里(7871キロ)を計画。エンジンは4基で、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。

 乗客定員は65から80人で全席ビジネスクラス、外寸は全長201フィート(約61メートル)、翼幅106フィート(約32メートル)、全高:36フィート(約11メートル)、内寸は全長79フィート(約24メートル)、通路の最大高さ6.5フィート(約2メートル)、2つのLRU(列線交換ユニット)、4系統のデジタルフライバイワイヤ、エンジンは100%SAF(持続可能な航空燃料)対応、騒音レベルはICAO(国際民間航空機関)のチャプター14、FAA(米国連邦航空局)のステージ5としている。

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Boom Supersonic
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