日本航空(JAL/JL、9201)は9月14日、羽田発ニューヨーク行きJL6便で「サステナブル・チャレンジフライト」を始めた。20日まで1週間実施する。ニューヨークの国連本部で、4年に一度のSDGサミットが18日と19日の2日間開催されるのに合わせた取り組みで、環境負荷を抑えた「サステナブルな未来の旅」をニューヨークへ向かう乗客に体験してもらう。
運航便の全燃料搭載量の約11%を、代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」に置き換えるとともに、カーボンクレジットの使用などでCO2(二酸化炭素)排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を達成した。
機内では、植物由来の素材を使ったスリッパや、紙製の機内食容器、再生プラスチック製のヘッドホン、プラスチック製カップなど、使い捨てプラスチックの削減につながる取り組みを実施。機内食のスリーブ(紙帯)は、知的障がいのあるアーティストが描いたアートを採用し、デザートは大豆由来の豆乳を使ったハーゲンダッツのアイスクリームを提供する。
初便となった14日のニューヨーク行きJL6便(ボーイング777-300ER型機、登録記号JA731J)は、乗客198人(幼児ゼロ)を乗せて羽田の112番スポット(駐機場)を午前11時6分に出発した。スポットではJALの赤坂祐二社長をはじめ、JAL便などのグランドハンドリング(地上支援)業務を担うJALグランドサービス(JGS)の新入社員35人を含むグループ社員約70人が見送った。
搭乗口で開かれた出発式で、赤坂社長は「2030年のSDGs(持続可能な開発目標)、2050年のカーボンニュートラルは、我々航空業界にとって大きなチャレンジ。本日の便はカーボンニュートラルだけではなく、いろいろなサービスの中でSDGsへの取り組みを進めている。ほんの先の未来のフライトを、ご体験いただければと思う」とあいさつした。
式典には来賓として、前環境相の西村明宏衆院議員(自民・宮城3区)、国土交通省航空局(JCAB)の平岡成哲局長、JALサステナビリティアドバイザーを務める慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授が招かれた。
内閣改造により、前日13日に辞職したばかりの西村氏は「SAFの利用は政府として10%を目標として掲げている。今回のフライトは11%で、カーボンクレジットなどの利用で、実質的なカーボンニュートラルが実現されており、非常に先進的な取り組みだ」と評価した。
平岡局長は「SAFの認知はまだまだ足りないと感じている。SAFを利用したフライトが国連本部があるニューヨークに飛ぶのは非常にシンボリックで意義深い試みだ。国交省としては、環境省など関係省庁と連携して、航空会社の協力を得て利用促進に努めたい」と語った。
蟹江教授は「今回は羽田からニューヨークまでで、(期間は)1週間だが、2030年には(これらの取り組みが)当たり前になっている必要がある」と、環境負荷を低減し、サステナビリティー(持続可能性)を実現していく上で、乗客が機内で体験するさまざまな取り組みが不可欠なものであることを強調した。
JALは2022年11月18日に、羽田から那覇までエアバスA350-900型機(登録記号JA03XJ)による「サステナブルチャーターフライト」を初開催。日本初のカーボンニュートラルを実現したフライトとなった。前回からサステナブルフライトを担当しているESG推進部企画グループの西岡桃子主任によると、第2弾となる今回は昨年から構想を練り始め、具体的な準備は4カ月ほどかけて進めてきたという。
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サステナブル・チャレンジフライトで行くニューヨーク(JAL)
日本航空
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