米RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)傘下のプラット&ホイットニー(PW)が製造するエアバスA320neoファミリー向けエンジン「PW1100G-JM」に追加検査が発生したことで、製造に参画する日本企業のうち、IHI(7013)と川崎重工業(7012)は9月12日午後、両社とも今後の業績影響は現時点で判断は難しいとして、見通しが明らかになり次第開示すると発表した。
RTXによると、追加検査はエンジンを機体から取り下ろして実施する必要があり、約600-700基が対象となる見込み。2024年から2026年にかけて、A320neoはエンジンが2基ある双発機で、1機あたりPW1100Gを2基搭載していることから、平均350機のAOG(地上駐機)が生じる見通し。
PW1100G-JMは、A320neoファミリーに採用されているエンジンの一つで、PWと一般財団法人日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTUアエロエンジンズが設立した合弁会社IAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)が主体となり、2011年から開発を開始。JAECが全体の23%を担当し、IHIと川崎重工のほか、三菱重工業(7011)グループの三菱重工航空エンジン(MHIAEL)が参画している。
IHIは約15%のシェアで参画しており、今年度の売上高と営業利益に影響があると想定。「現段階では影響を正確に評価するのは難しい状況」として、見通しが明らかになった時点で改めて発表するとした。
川崎重工も、「当社業績へも影響があると考えている」として、影響額が判明次第、公表するとしている。
対象となるエンジンのシリアルナンバーなどは、まだ航空当局や航空会社などに示されておらず、現時点で具体的な影響規模は見極めが難しい状況のようだ。PWは改修手順を示す「サービスブリテン(SB)」を今後60日以内に発行する予定で、対象エンジンが特定されるまでにはしばらく時間がかかるとみられる。
国内の航空会社では、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)がPW1100Gを搭載するA320neoとA321neoを計33機運航。標準型のA320neo(2クラス146席)が11機、長胴型のA321neo(2クラス194席)が22機で、A320neoを中国などの近距離国際線と国内線、A321neoは国内線で運航している。
関連リンク
RTX
Pratt & Whitney
Pratt & Whitney Geared Turbofan
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