エアバス, エアライン, 官公庁, 機体, 解説・コラム — 2023年9月12日 19:45 JST

A320neo向けエンジンPW1100点検、最大700基取り下ろし

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 米エンジンメーカー、プラット&ホイットニー(PW)の親会社であるRTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)は現地時間9月11日(日本時間同日夜)、エアバスA320neoファミリー向けエンジン「PW1100G-JM」の点検対象を拡大したと発表した。約600-700基のエンジンを機体から取り下ろし、点検する必要があるという。

—記事の概要—
60日以内にSB発行
日本企業も製造参画

60日以内にSB発行

PW1100G-JM(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 RTXは今年7月に、PW1100Gで使われている特定のエンジン部品を製造時に使用される粉末金属に「まれに発生する症状」があるとして、エンジンを機体から取り下ろす点検が必要だと発表。2024年4月から7月までの期間内に、取り下ろしと点検が必要となり、このうち、9月中旬までに約200基を取り下ろす必要があると発表していたことから、大幅な対象拡大になる。2024年から2026年にかけて、平均350機のAOG(地上駐機)が生じる見通し。

 PWは今後当局と調整し、改修手順を示す「サービスブリテン(SB)」を60日以内に発行する予定。国土交通省航空局(JCAB)によると、現時点では対象となるエンジンのシリアルナンバーなどは明らかになっていないという。SBや先駆けて出される暫定版が発行され、対象エンジンが絞り込まれるまでは、航空当局や航空会社の対応に限界があるといえる。

 国内でA320neoファミリーを運航する航空会社のうち、PW1100Gを搭載した機体はANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)のみで計33機。内訳は、標準型のA320neo(2クラス146席:ビジネス8席、エコノミー138席)が11機、長胴型のA321neo(2クラス194席:プレミアムクラス8席、普通席186席)が22機となる。

 ANAは、A320neoを中国などの近距離国際線と国内線、A321neoは国内線で運航。A320neoに影響が出た場合は、国際線はボーイング787型機や767に機材を変更して対応できる。一方、A321neoは羽田-福岡線のような幹線から地方路線まで、全国の国内線に幅広く投入しており、対象となるエンジンの数が判明するまでは、今後の機材繰りの判断が難しい状態だ。

 大手2社のうち、日本航空(JAL/JL、9201)はPW製エンジンを積む機体を現在は運航していない。

 ANA以外にA320neoファミリーを現在運航している国内の航空会社は、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の3社。ピーチはA320neoとA321neoの航続距離延長型A321LRの2機種、ジェットスター・ジャパンはA321LR、スターフライヤーはA320neoで、いずれもエンジンはCFMインターナショナル製「LEAP-1A」を選択している。

日本企業も製造参画

 RTXによると、エンジン取り下ろしが発生する増加分の多くは、今年から2024年初頭にかけて発生。PWは、他の同社製エンジンへの粉末金属の影響を分析中で、現在のところ他のエンジンへの影響ははるかに少ないと予想されるという。

 A320neoの「neo」は「ニュー・エンジン・オプション」の略で、低騒音・低燃費の新型エンジンを搭載。航空会社やリース会社は、機体発注時に2種類のエンジンから選択でき、PW1100GとLEAP-1Aから選べる。

 PW1100G-JMは、A320neoやA321neo、短胴型のA319neoなど、A320neoファミリーに搭載するエンジンで、PWと一般財団法人日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTUアエロエンジンズが設立した合弁会社IAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)が主体となり、2011年から開発を開始。JAECが全体の23%を担当し、三菱重工業(7011)グループの三菱重工航空エンジン(MHIAEL)、IHI(7013)、川崎重工業(7012)が参画している。

*IHIと川重が今期業績への影響を想定と発表。記事はこちら

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