「佐賀空港が開港後、ほとんど乗ってくれなくて撤退が続いたが、ANAはつらいときにそばにいてくれた仲間」──。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で航空需要が蒸発した3年前、佐賀県の山口祥義知事は、全日本空輸(ANA/NH)を中核とするANAグループ社員の出向を2020年度内から受け入れると表明。心境をこう語った。
県によると、ANAグループから最大11人の出向者を受け入れ、現在は6人が働く。出向者のうち、佐賀県に引っ越して2021年7月から県庁で特産品の販路拡大などに取り組む客室乗務員、本多博恵さんは2016年にANAへ入社。コロナで乗務が激減する中、新しいことを始めたいと、移住を伴う出向に自ら名乗り出た。
熊本県出身の本多さんは、これまで佐賀に住んだことも、通学などで頻繁に通うこともなく過ごしてきたという。籍を置く県庁の流通・貿易課では、日本酒のPRなどが主な仕事。佐賀県の日本酒は「芳醇(ほうじゅん)で、九州の甘いしょうゆに合います。飲みやすいものもあるので、日本酒に親しみのない方にも飲んでいただきたいです」とPRする。
本多さんによると、県内にはお酒を現在造っていない所も含め、24の蔵元があるという。出向で農家や蔵元を訪れる機会ができたことから、今後乗務に本格復帰する際は「佐賀県産だけでなく、新酒の時期などを話題にしながら、日本酒をおすすめしたいですね」と話す。酒造りや農業に間近で接してきたことは、機内サービスの向上につなげられそうだという。
これまで佐賀と大きな接点がなかった本多さんが、出身地・熊本と大きな違いがあると感じたのが、地元の魅力を話し相手にどう表現するか、だった。熊本の人は地元の良さを自ら語るのに対し、佐賀の人たちは「皆さん控えめなのですが、本当は地元に良いものがあることを知っている、という方が多いですね」と、同じ九州でも控えめな人が多い印象だという。
そうした控えめな佐賀を積極的にPRしようと、本多さんは夏休み1日限定「九州SEGA国際空港」イベントを企画。佐賀空港を管理する佐賀県、セガ(東京・品川)、ANAを傘下に持つ持株会社ANAホールディングス(ANAHD、9202)と、3者がそれぞれ以前から交流があったことから、佐賀空港の愛称「九州佐賀国際空港」の1文字違い企画として進めた。「県外から(セガのキャラクター)ソニックに会いに来た、という方もいらして、やって良かったです」という。
また、平日開催とすることで、佐賀発着便の搭乗率向上につなげつつ、ソニックをきっかけに佐賀県を知ってもらうのも狙いの一つだ。本多さんは「県内外の方に佐賀県の良いものをもっともっと知っていただき、たくさんの方に佐賀県へ来ていただきたいです」と話していた。
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