エアバスは現地時間7月21日、大型輸送機A330-700L「ベルーガXL(BelugaXL)」の6号機(試験登録記号F-WWYX)が初飛行したと発表した。同型機最後の機体で、これまでの5機は胴体に描かれた「目」がぱっちりと開いていたが、“末っ子”の6号機はいたずらっぽく笑っているような表情が特徴となっている。
6号機は21日午前9時ごろ仏トゥールーズを離陸し、2時間40分ほど飛行して午前11時42分ごろ同地へ着陸した。
ベルーガXLはA330-200F貨物機をベースに開発され、A300を基にした大型輸送機A300-600ST「ベルーガST」の後継機。コンポーネントや機器は既存のものを再利用するが、コックピットや貨物室などは新規に開発された。エンジンは、英ロールス・ロイス製トレント700を2基搭載し、2020年1月9日に就航した。
輸送力をベルーガSTよりも30%向上させ、A350の主翼を2つ同時に運べるようにした。機体断面は1メートル広くなり、ペイロードも12%増えている。ベルーガSTとベルーガXLともに、全機がエアバスの子会社「Airbus Transport International(ATI、エアバス・トランスポート・インターナショナル)」によって運航されている。
ベルーガはシロイルカを意味する愛称。エアバスは5機のベルーガSTを、6機のベルーガXLに更新する計画を進めており、最後のXLとなる6号機が初飛行を終えたことで機材更新も終盤に差し掛かっている。
更新後のベルーガSTは、エアバスが2024年に設立を予定している特大貨物輸送サービス「Airbus Beluga Transport(ABT、エアバス・ベルーガ・トランスポート)」を担う新会社が運航を引き継ぐ。ベルーガSTの設計寿命が5万回のフライトであるのに対し、全5機の平均が1万5000回程度と余裕があることから、ヘリや航空機用エンジン、人工衛星、船外実験装置、精密機器などの特大貨物を解体せずに運べる特徴を生かしたビジネスを立ち上げた。
ABTの設立に先立ち、2021年12月に警察庁が発注したエアバス・ヘリコプターズの大型ヘリコプター「H225 スーパーピューマ」1機を、ベルーガSTが仏マルセイユからワルシャワ、ノボシビルスク、ソウル(仁川)、関西空港経由で神戸空港に運んだ。今年5月にも、海上保安庁が発注した2機のH225を神戸へベルーガSTが運んでいる。
一方、ベルーガXLはエアバス機を製造するために運航されるため、日本への飛来は当面ないとみられている。
6号機
・エアバス、ベルーガXL最終6号機お披露目 いたずらっぽく笑う”シロイルカ”(23年6月29日)
ベルーガXL
・エアバス、ベルーガXLの5号機初飛行 大型輸送機”シロイルカ”更新進む(22年7月23日)
・エアバス、ベルーガXLの4号機就航 A350の主翼運ぶ(21年10月8日)
・エアバス、ベルーガXL就航 新大型輸送機、A350主翼2つ運ぶ(20年1月14日)
・ベルーガXL、初飛行成功 19年就航へ(18年7月20日)
・エアバス、「笑顔の」ベルーガXL 初号機ロールアウト(18年6月29日)
・デザインは「笑顔のシロイルカ」エアバスのベルーガXL、社員投票で決定(17年4月27日)
・エアバス、ベルーガXLの最終組立開始 A350増産で大型輸送機(16年12月10日)
・エアバス、ベルーガXLの製造開始 A350増産に対応(15年12月22日)
・エアバス、ベルーガ新型機開発へ 既存機は25年までに退役(14年11月18日)
2度目の神戸
・海上保安庁のH225スーパーピューマ、ベルーガで神戸に2機到着(23年5月11日)
・エアバスの大型輸送機ベルーガ、神戸でヘリ降ろし”日帰り”(23年5月10日)
・シロイルカからピューマ現る エアバスのベルーガ、神戸へ海保大型ヘリ輸送(23年5月10日)
・神戸にエアバス「ベルーガ」到着 シロイルカ2度目の大型ヘリ輸送(23年5月10日)
神戸に初飛来
・22年ぶり飛来の大型輸送機「ベルーガ」神戸から離日 大型ヘリ運ぶ(21年12月25日)
・エアバスのシロイルカ、神戸まで大型ヘリ運ぶ 写真特集・ベルーガ22年ぶり来日(21年12月30日)
ベルーガSTで特大貨物輸送
・エアバス、大型輸送機「ベルーガ」で特大貨物輸送 24年に新会社(22年1月26日)