全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は7月10日、日本貨物航空(NCA/KZ)を10月1日に完全子会社化すると発表した。今年3月7日に基本合意したもので、簡易株式交換により実施し、株主総会の決議による承認を受けずに行う見通し。将来的にANAの貨物事業との統合・再編を目指す。
株式交換の契約は10日付で締結。NCAは9月中旬までに臨時株主総会を開き、10月1日にANAHDがNCAを完全子会社化する。ANAは、かつてNCAに27.59%出資していたが、2005年に全株式を日本郵船(9101)へ譲渡した。今回の契約により、欧米への貨物便を多く運航するNCAを傘下に収めることで、航空貨物事業を拡大する。
一方、6月27日に開かれたANAHDの株主総会では、株主から「NCAはコロナで一時的に利益を出したが、毎年赤字を出している会社ではないか。(買収する)メリットはどこにあるのか」との疑義が出た。これに対し、グループの経営戦略を担当するANAHDの福澤一郎副社長は「アジア-欧米間の輸送力を強化する必要があった」と応じ、NCAが持つ長距離国際線ネットワークなどが、グループの貨物事業を強化する上で必要と説明し、理解を求めた。
ANAグループの貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)は、貨物専用機を11機運航。内訳は大型貨物機のボーイング777Fが2機、中型貨物機の767Fが9機で、2028年以降に次世代大型機777Xの貨物型777-8Fを2機受領する見通し。
NCAは15機保有し、このうち大型貨物機の747-8Fを8機運航中。残り7機は747-400Fで、すべて他社へリースしている。
ANAHDは、2024年3月期以降の業績に与える影響は「精査中」としている。
競合の日本航空(JAL/JL、9201)は、2010年1月の経営破綻後、事業見直しで貨物機の運航から撤退したが、今年5月に貨物専用機を13年ぶりに導入すると発表。自社で保有する中型旅客機767-300ERのうち、3機を貨物専用機(貨物機)に改修し、2023年度末から東アジアを中心とした国際線に順次投入して国内線も飛ぶ。ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(9064)との協業が主体となり、国内の宅配や東アジアのeコマース(電子商取引)に特化した貨物事業を展開していく。
3月に発表
・ANA、NCAを子会社化へ 欧米貨物便を強化(23年3月7日)
18年度からコードシェア
・ANAとNCAが業務提携 18年度からコードシェア(18年2月27日)
ANAの事業戦略
・ANA、787を2030年度100機超 非航空の収益力強化=新中期経営戦略(23年2月15日)
・ANA、777X貨物機と737MAX発注 片野坂HD会長「安全性保証されていると確信」(22年7月19日)
・ANA、成田に貨物便集約 アジア-欧米間の取込強化、収益向上へ(21年2月5日)
JALはヤマトと貨物事業
・JALはなぜ”禁じ手”貨物機を解禁するのか 特集・ヤマトと組むコロナ後の貨物戦略(23年5月4日)
・JAL、貨物機を13年ぶり導入 767旅客機を改修、23年度末から東アジアに(23年5月2日)
・JALとヤマトのA321貨物機、なぜスプリング・ジャパンが飛ばすのか(22年11月22日)